2017年第3回定例会 討論(2016年度決算認定について)

ただ今議題となっております議案及び陳情について、賛成並びに反対の討論を行います。

当該決算年度の一般会計歳入決算額は413億7770万8千円、歳出決算額は402億8964万6千円で、歳入歳出ともに史上最大規模の決算額となっておりますが、これは、少子高齢化社会の進行の中で、毎年確実に増加する扶助費と、国の一時的な施策である臨時福祉給付金等によるものと言えるでしょう。

実質単年度収支が赤字に

そうした中で今決算の特徴を挙げれば、単年度収支のみならず、実質単年度収支のおいても△8億1805万7千円の赤字となったことと、前年度88.3%であった経常収支比率が96.8%と上昇したことであります。2010年度以降、6年連続実質単年度収支の黒字を計上してきた本市が赤字へと転落した理由については、様々な要素が考えられますが、端的に言えば、最も大きな要因は、市内にある大規模法人1社の動向が大きく作用したと言えるでしょう。

具体的には、法人市民税は、2014年度9億6488万9千円の決算であったものが、2015年度は71%増の16億4996万2千円となり、それがまた2016年度では9億8186万8千円と乱降下したことと、合わせて当該決算年度の地方交付税においては前年度の法人市民税の増加に伴い、基準財政収入額が増となり、交付税額が前年度対比で4億3265万2千円マイナスとなったこと、さらに消費税8%への増税からわずか2年目であったにもかかわらず、地方消費税交付金が前年度から約10%約2億円の減額となるという歳入面でのトリプルパンチに対し、約10億円の財政調整基金の取り崩しにより歳入を補ったことが実質単年度収支の赤字の最大の要因であると言えるでしょう。

市長は、この実質単年度収支の赤字への転落について、「一時的なものであること」「年度間の財源調整機能として財政調整基金が機能した」という見解を本定例会において示されました。確かに、当該決算年度は、前年度の法人市民税の増額決算に伴う地方交付税のマイナス要素と法人市民税のマイナス要素が重なった、すなわち二重のマイナス要素が重なり合ったことによるものですから、来年度以降、2017年度補正予算で増額補正された法人市民税が同様に16億円規模で歳入される状況が続くならば、来年度は地方交付税も含めて二重のプラス要素が期待できるという点では、おっしゃるとおりだと思います。

しかし、この法人市民税の動向は現状では極めて不安定であるとともに、特に、大規模法人1社の収益状況、すなわちここ2〜3年の間では5〜6億円ほどの法人税割額の増減が、本市の財政状況全体に大きな影響を与えているという現実は、注意深く見ておく必要があると思います。そして、このことは、本市の財政構造の特徴でもあり、ある意味で財政構造の脆弱性を示すものでもあると捉えておく必要があると思います。

それでは、こうした特徴を持つ2016年度決算の認定について、私が反対する主な理由を申し上げて参ります。

「実施計画事業を網羅できた」と言うけれど

市長は今決算について、「第4次総合計画に掲げている9つの将来目標の着実な推進に向け、実施計画事業を全て網羅することができた」という趣旨の評価をされておられました。ご承知のとおり、第4次座間市総合計画は、基本構想、実施計画、戦略プロジェクト、という構成になっております。10年間の目標を定めた基本構想、それを具体化するための事業計画と予算配分を示す実施計画、さらに市政上の最重要課題を戦略目標とする戦略プロジェクトから成り立っているわけであります。ご承知のとおり、基本構想は議会の議決事項でありますが、実施計画と戦略プロジェクトは議決事項ではありません。いわば、行政の裁量的部分であります。よって、この行政の裁量的部分である実施計画に沿って事業が執行されたかどうかという視点は、行政の内部的評価としては理解はできますが、議会のチェック機能としては、実施計画自身が妥当なものであるのかどうかという視点と、その評価が求められると思います。

そこで、この行政の裁量的部分である実施計画及び戦略プロジェクトと当該年度の決算結果を見て参りますとと、大きな変更があった事業さらに実施計画にはなかった事業として、都市部所管の座間南林間線道路改良事業と上下水道局所管の上下水道局庁舎等整備事業があります。

都市計画道路座間南林間線は見直すべき

座間南林間線道路改良事業は、実施計画、戦略プロジェクトに位置付けられておりましたが、ともに、市道4号線視距改良工事として小田急線踏切から約400mの交通安全対策として、踏切及び道路の拡幅を行うものであったものが、当該決算年度の6月議会において、突然、都市計画道路座間南林間線の整備用地として、踏切に隣接する720㎡の土地を7200万円で買い取ることが議会に提案され、これまで進めてきた市道4号線視距改良工事を中止し、小田急線踏切の立体交差化と都市計画街路として整備が打ち出されてきたわけであります。

この計画変更について私は、この地域の歴史的景観の保存のために多額の事業費を投入してきた街並み環境整備事業との整合性、さらに景観条例で特定景観計画地区に指定してきたこととの整合性、さらに概算見込みで踏切立体交差だけで27億円、さらに街路整備事業費をあわせると40億円〜50億円にも上ると言う財政的な負担の面からも、都市計画街路としての整備に反対の旨を表明してきたところであります。よって、これまでの市道4号線視距改良工事を中断し、都市計画街路としての整備方針へと転換した当該年度の予算執行並び行政事務執行を認めることはできません。

なお、座間南林間線の都市計画街路としての整備については、慎重に議論を重ね、再考すべきと考えますが、もし、整備を進める場合でも少なくとも10年単位の年数を要すると思われますので、現状をそのまま放置するのではなく、その間の交通安全対策を講じるべきであることを申し添えておきたいと思います。

PPP(官民連携)事業による上下水道局庁舎整備事業は認められない

次に、上下水道局庁舎等整備事業についてでありますが、この事業は実施計画にも、戦略プロジェクトにもなかったものが、2015年度より当時の上下水道部内で検討が開始され、当該決算年度である2016年度の8月議会において、5億2260万6千円の債務負担行為が議決され、2017年2月に大和リース株式会社と5億2254万円の譲渡特約付き賃貸借契約が結ばれております。

この上下水道局庁舎等整備事業については、事業方式の妥当性としては、公設・公営方式の方がPPP・リース方式より財政的には有利であったことはすでに詳しく指摘をしておりますので、ここでは繰り返しませんが、水道料金を原資とする今後20年間にわたる公金の支出としては妥当性に欠くことは明らかであり、当該年度の決算を認定することはできません。

そして、こうした事業方式の妥当性の問題と合わせて深刻なことは、事業の推進過程、特に意思決定過程における手続きの問題であります。当該年度の決算にあたって監査委員が作成した決算審査意見書では、「民間活力有効利用指針に基づいた取り組み姿勢を評価し」と記されておりますが、すでに指摘したとおり、今回の上下水道局庁等整備事業においては、民間活力有効利用指針に示されている手続きに基づいたものではありません。

また、昨年8月議会に提案された債務負担行為の設定にあたっては、事業スキームが6月議会の答弁とは大きく変更されていたにもかかわらず、その説明は一切ありませんでした。

さらに、事業者選定にあたっては、公募型プロポーザル方式が採用されたものの応募事業者は1社しかなく、品質を担保するための最低基準点が設定されていなかったため、低い評価点であったにもかかわらず、応募事業者との契約に至っております。

こうした行政事務の執行は、まさに「PPP事業ありき」で事務が進められてきたものであり、大変危うさを感じざるをえません。現在、国が推進しようとしているPPP事業は、その是非については私自身、様々な問題点があると思っておりますが、その国でさえ、PPP事業の推進にあたって出された様々な通知の中で、「事業の発案から終結に至る全過程を通じての透明性や公平性の確保」を強調しているわけですから、本市初のPPP事業というふれこみとは裏腹に、誠にお粗末なものとしか言いようがありません。当局に対しては猛省を促すものであります。

将来見通しがずさんなファシリティマネージメント(施設管理)推進事業

次に、同じく行政事務の執行上の問題として、ファシリティマネージメント推進事業について指摘をしておきたいと思います。本市の公共施設管理(ファシリティマネージメント)については、2012年度に「座間市公共施設白書」が作成されたの皮切りに、2014年度には「座間市公共施設利活用指針」が、2015年度には「座間市アセットマネージメント基本方針」が策定され、当該決算年度2016年度には、「座間市公共施設再整備計画基本方針」が策定されております。そして、現在では、当該決算年度に策定された基本方針をもとに、2019年度を目途に「座間市公共施設再整備計画」が策定されることとなっております。

今後の人口減少、超少子高齢化社会へと向かう中で、公共施設のあり方やその管理方法を最適化していくことは私も必要だと考えます。その際に重要なことは将来見通しをどのように設定するのか、ということであります。

しかし、本市のこの間のファシリティマネージメントに係わる各種指針や方針において、前提条件となる将来見通しがほんとうに妥当なものであるのかという疑念が今決算審査で明らかになりました。

具体的には、今後の施設更新の費用試算についてであります。2015年度に策定された「座間市公共施設利活用指針」では、今後20年間に必要な建て替え・大規模修繕の費用は約408億6900万円、年平均約20億円の支出が必要となる一方で、2009年度から2011年度の維持管理費用は約5億円。すべての施設を大規模修繕し、建て替えを実施する場合は、年間約15億円、今後20年間で約300億円の新たな支出が必要であると、結論付けていたものが、翌年の2016年度に策定された「座間市アセットマネージメント基本方針」では、今後20年間の維持更新費用は総額約389億5400万円。これに対し過去3年間の普通建設事業費(都市基盤系施設を除く)の平均支出額が13億6100万円であることから、年間約6億円の不足額が生じ、現有公共施設を3割程度縮減しなければ今後の維持が困難であるとしています。

このように年間の不足額がわずか1年で、約15億円から約6億円へと変わっているわけですが、これは「公共施設利活用指針」では、支出費目を「維持補修費」で計算していたものを、「アセットマネージメント基本方針」では、普通建設事業費から道路、橋りょう等の都市基盤施設を除いたものに変更したことによるものと思われます。確かに建て替えや大規模修繕は、「維持補修費」ではありませんから、変更後の普通建設事業費の数字を用いるのが正しいと思いますが、変更にあたって、なぜ変更したのか等の説明は全く記されておりません。今後20年間の将来見通しにあたって、不足額が300億円から120億円へと大きく変わっているにもかかわらず、何の説明もなしに変更されているというのは、理解に苦しむ次第であります。

また、当該決算年度で策定された「座間市公共施設再整備計画基本方針」では、前年度の「アセットマネージメント基本方針」と同様に、普通建設事業費の過去3年間の平均値をもとに年間6億円の財源不足額とし、「現有公共施設を3割程度縮減しなければ今後の維持が困難である」と結論付けております。

ところが、ここで用いている普通建設事業費の過去3年とは、2012年度から2014年度であり、直近の2014年度から2016年度の数値を用いると大幅に変わってきます。担当課にお聞きしたところ、直近の数値は持ち得ていないとのことでしたので、あくまでも私の試算によるものですが、普通建設事業費から都市基盤系施設を除いた額は、2014年度が18億8097万円、2015年度が24億9411万3千円、2016年度が25億4507万5千円となり、直近3ヵ年の平均は、23億671万9千円となります。この数値からすると、今後20年間で必要とされる年平均20億円を上回り、論理的には現有公共施設を全て維持することができるという具合に結論が大きく変わってくることになるわけであります。

当該決算年度に策定した「座間市公共施設再整備計画基本方針」は、今後3ヵ年かけて各部局が公共施設再整備計画を策定していく上での、まさに基本方針を定めたものであるにもかかわらず、こうした推計値の違い、しかも現有公共施設を維持するのか、3割縮小するのかという基本的な問題の結論が違ってくるわけですから、どのようにして再整備計画を策定するのでしょうか。約750万円の委託費をコンサルタント会社に支払い策定した基本方針ですが、現状では再整備計画を策定するにあたっての基本方針足りえないと言わざるを得ません。再度、公共施設再整備基本方針を見直す必要があるということを申し上げておきたいと思います。

次に、マイナンバー制度導入に伴う関係経費の支出に反対するものであります。当該決算年度では、マイナンバー関連のシステム改修事業及び個人番号カード交付事業の総額は、9669万3千円。このうち国からの補助金の総額は4698万9千円にすぎず、残りの4970万4千円は本市の単独財源によって賄われていることが明らかになりました。国からの一方的な制度であるにもかかわらず、補助率100%どころか、半分以下でしかなかったいう現実は到底容認することができません。国が支出する初期投資額の総額は約3000億円、これに地方自治体の負担分をあわせると少なくとも6000億円以上の経費をかけながら、国民にはほとんどメリットはなく、個人情報の漏えいが本市を含め全国の地方自治体で多発するという状況の中で、適正な支出であると認めることはできません。

チェック機能を果たすことができる座間市議会へ
以上、2016年度の決算認定に反対する主な理由を申し上げて参りました。住民福祉の向上のために限られた財源をどの分野にどのくらい配分をするのか、ということは、地方自治の永遠のテーマでもあります。

再度、申し上げますが、議会が議決した総合計画は、政策、施策の方向性を示したものであり、これを具体化するのが、当局の裁量部分である実施計画や毎年度の予算編成であります。故に、「実施計画のとおりに予算が執行されたから良い」とするだけでは議会のチェック機能を果たしたとは言えません。総合計画に示されている政策・施策の方向性の中で、事業化されていない施策や実施計画に盛り込まれていたとしても、適正な予算措置がされていない施策、あるいは必要以上に過大に予算措置されている施策など様々なものがあるでしょう。こうしたことについて、座間市議会が、市民の立場にたって、活発な議論が交わされる議会となることを心から願うものであります。

次に、陳情についてでありますが、ただ今議題となっております陳情のうち、陳情第16号「薬害肝炎救済法の延長を求める意見書の採択を求める陳情」及び陳情第17号「所得税法第56条の廃止を求める意見書を国に提出することを求める陳情」については、その趣旨に賛同し採択すべきと考えます。陳情第14号「北朝鮮のミサイルに備えた避難訓練等の実施を求める陳情」については、その趣旨に全く賛同することはできませんので、不採択とすべきであると申し上げ、議員の皆様のご賛同をお願いし、討論を終わります。