2018年第二回定例会 討論(請願・陳情について)

それでは、ただ今議題となっております請願並びに陳情のうち、陳情第30号について反対、その他の請願、陳情については賛成の討論を行います。

「家庭教育支援法の制定を求める意見書の提出を求める陳情」への反対討論

まず陳情第30号「家庭教育支援法の制定を求める意見書の提出を求める陳情」について反対の討論を行います。本陳情は、国に対し新たに家庭教育支援法の制定を求めるものでありますが、陳情者は「立法事実」すなわち、法律を制定する必要性として、「過保護、過干渉、放任など、家庭教育力の低下が強く指摘されるようになり、極めて憂慮するところになっている」こと、また「児童虐待の相談件数はこの3年間で毎年1万件以上増加し、平成28年度には12万2575件に上り、一層深刻さを増している」ことをあげております。

しかし、前者の「過保護、過干渉、放任」を「家庭教育力の低下」と断じることには無理があると思われます。何を持って「過保護、過干渉、放任」とするのかということは、極めて主観性が強いものであり、法的限界を越えない限り、親がわが子に対する家庭での養育ないし教育において何を大切にし、どういった考えで臨むかは、まさにそれぞれの価値観そのものであると考えるからであります。そして、親が子どもにどのような養育を施すのかということについては、その裁量が最大限尊重されるべきであると思うからであります。

一方、後者の「虐待」については、憲法上からも、個別法である児童虐待の防止等に関する法律の規定からも法的限界を超えるものであります。そして、児童虐待についても、育児不安についても、児童虐待の防止等に関する法律において「国及び地方公共団体の責務」として定められている体制整備が、未だ不十分なことに起因するものであり、求められているのは現行法のもとでの施策の充実であると考えます。また、これらのことは、生活保護世帯の増加や失業率の増加といった経済的な要因との相関性が高く、「貧困の解消」が不可欠の前提条件となるものであり、具体的な経済的支援や就業支援こそが最良の解決策であると考えるものであります。

以上の点から、陳情者が求める家庭教育支援法の制定については、法律の制定を必要とする立法事実は認められず、よって、本陳情は不採択とすべきものと考えるものであります。

「国に対し消費税増税中止を求める意見書の提出を求める陳情」への賛成討論

次に、陳情第33号「国に対し消費税増税中止を求める意見書の提出を求める陳情」について賛成の討論を行います。本陳情は2019年10月に予定されている消費税率10%への引き上げの中止を求めるものであります。

安倍政権は、2014年4月に消費税率を8%に引き上げて以降、二度にわたって10%への引き上げを延期をしております。その理由は2回とも「内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべき」というものでありました。この判断は、2014年12月の解散総選挙と2016年7月の参議院選挙の直前に公表するという具合に、あからさまに選挙を意識し、その結果によって自らの政権基盤を強固にしようとする「私欲」によって成されたものとはいえ、純粋に経済政策上から見れば極めて真っ当な対応であります。

消費税収は、税率5%であった2013年度10.8兆円が、税率8%となった2014年度は16.0兆円、2015年度は17.4兆円と、順当な伸びを示していた一方、2016年度は17.2兆円、2017年度は17.1兆円と2年連続減収となっております。また、家計最終消費支出は、税率8%へ引き上げた直前の駆け込み需要によって298.4兆円を記録した2014年第1四半期以降、低迷を続け、未だにこの水準を回復しておりません。また過去20年間の名目GDPの伸び率を見ても、消費税率5%となった1997年は533.3兆円、それに対し2017年は548.1兆円とわずか2.3%しか伸びておらず、これはいわゆる先進国中最下位、しかも政府は2016年にGDPの算出方法を変えておりますので、改定前の基準に置き換えれば、ほぼゼロ成長というのが、この20年間の日本経済の実態であります。

こうした状況の中で、消費税率を10%に上げれば、どうなるのでしょうか。安倍首相が「内需を腰折れさせかねない」と判断した状況は果たして改善されたのでしょうか。個人消費を回復させる基礎である国民の可処分所得は上昇しているのでしょうか。断じて否であります。消費税率10%への引き上げは、GDPの約6割を占める個人消費をさらに冷え込ませ、デフレを促進することとなります。

よって、本陳情は採択すべきと考えるものであります。
 
教育、地方財政最低賃金所得税法第56条の廃止等の請願・陳情についての賛成討論

次に、請願第2号「義務教育に係る国による財源確保と、35人以下学級の着実な実施・進行を図り、教育の機会均等と水準の維持・向上並びに行き届いた教育の保障に関する請願」、陳情第29号「地方財政の充実・強化を求める陳情」、陳情第31号「神奈川県最低賃金改定等についての陳情」、陳情第32号「所得税法第56条の廃止を求める意見書を国に提出することを求める陳情」については、概ねその趣旨に賛同し、採択すべきものとして賛成をするものであります。

私は、これらの施策を実現する財源は、金融緩和と大胆な財政出動により賄うべきであると考えます。本来、アベノミクスは「金融緩和、財政出動、成長戦略」という「3本の矢」であったはずですが、第1の矢である金融緩和によって、400兆円を超える緩和マネーが供給されたにもかかわらず、一部輸出関連企業を除いて設備投資には回らず、株式市場に投入されるか、大企業の内部留保として積み上げられただけでありました。これでは、GDPの6割を占める個人消費の拡大となることはありえず、「庶民は口をあけて待っていれば、そのうち大企業の好景気のおこぼれがしたたり落ちてくる」という「トリクル理論」は完全に破たんをしたわけであります。

一方、第2の矢である財政出動は安倍政権発足直後は公共事業や地方創生関連事業など、それなりのものが行われましたが、一方で社会保障費をこの5年間で約3兆5000億円も削ってしまいました。一方で財政出動を行いながら、一方で政府支出を切り詰めれば景気拡大策としての財政出動もその効果が相殺されてしまいます。ご承知のとおり、GDPは政府支出、企業支出、家計支出の総量を表すものですから、民需が低迷している中で、他の政府支出を削減すれば景気拡大策にはなりません。政府支出の総額が増えなければ国内の総需要を増やすことにはならないからであります。一言で言えば財政出動は極めて中途半端なものでありました。

さらに、第3の矢である成長戦略は、結局何も打ち出されておらず、強いて挙げればカジノ法によるバクチ景気と国家戦略特区という「お友達特区」による、わけのわからない大学の新設ぐらいしか見当たりません。

こうしたアベノミクスの惨状の中で、あえて申し上げればデフレ下における経済政策としての「金融緩和、財政出動、成長戦略」というのはけっして間違いではありません。問題は、金融緩和によって産み出されたマネーを誰のために、どういう政策目標のために使うのかということであります。教育、地方財政、賃上げ、自営業の所得向上という、これらの請願・陳情に込められている政策実現のためにこそ、金融緩和によって生み出された資金をもとに財政出動し、国民のしあわせのためにこそ使うべきであります。そして、それこそが、我が国の成長戦略であると考えるからであります。

以上の点から、議員の皆様においては、これらの請願・陳情を採択されるよう訴え、討論を終わります。