絵に描いたような出来レース 市民交流プラザの指定管理者 (2019年第2回定例会討論)

議案第38号座間市立市民交流プラザの指定管理者の指定について、反対の討論を行います。

 

本件は、小田急相模原駅前西地区市街地再開発事業において、本市が買い取ることとなった保留床の3階部分に、市民交流プラザを開設し、「アクティオ日鉄コミュニティ共同事業体」を指定管理者として指定しようとするものでありますが、私は、次のような点から本議案に反対するものであります。

1.手続きの不透明性と妥当性
2.事業者としての適性
3.審議及び審査にあっての当局の情報の非開示性 

 

以下、具体的な反対理由を申し述べて参りたいと思います。

 

1.手続きの不透明性と妥当性

1)見積もりは1者だけ

 

 

市は昨年12月議会において、同施設の指定管理料の上限額を2019年12月から2022年3月までの2年3か月で1億604万3千円、年額4544万7千円とする債務負担行為を議会へ提案しました。


 この際に明らかとなったことは、市が指定管理料の上限額を設定するにあたって、運営・管理に要する費用を自ら算出することができないということから、「全国的に数多くの実績のある事業者1者から見積もりを徴取した」ということでありました。いわゆる「1者見積もり」であります。


 通常、見積もりを徴取する場合は、複数者から見積もりをとることは、行政においても、民間においてもきわめて常識的なことのはずであります。座間市の契約事務の手引きにおいても、委託業務等の参考見積もりについては「複数者が徴取すること」が明記され、その理由について「見積もり価格が市場における適正価格であるか判断でき、入札の公平性が保てる」としております。

 

もちろん、これは委託業務等の契約に関することでありますので、指定管理料の上限設定にあたって適用されるものではありません。しかし、指定管理ではこの手引きが適用されないのだから、「1者見積もりでもよし」とするのは、あまりにも非常識であり、適正さに欠けるものと言わなければなりません。

 

問題は、まず、この上限額が市場における適正価格であるかどうか判断できないということであります。さらに、見積もりを提出した事業者が公募に応じ、もしも指定管理者として選定された場合、座間市が支払う指定管理料は、まさに「言い値」となってしまうということであります。

 

2)「まさか」が現実に 見積もり業者の子会社が指定管理者に

 

私は、このことを指摘した12月段階では、まさか、そんなことはありえないだろうと、思っていましたが、なんと今回、その「まさか」は現実のものとなってしまいました。

 

本定例会の私の総括質疑において、見積もりを徴取した事業者はどこか?と尋ねたところ、副市長の答弁は「新日鉄興和不動産株式会社」とのことでありました。「新日鉄興和不動産株式会社」は本年4月から「日鉄興和不動産株式会社」と名称変更をされたとのことで、以下、日鉄興和不動産株式会社と呼びます。(実は、私はほんとうに日鉄興和不動産が見積もりを出したのか、懐疑的なのですが、とりあえず、そう答弁されておられるので、ここだとしておきましょう)

 

一方、今回、指定管理者として提案されております「アクティオ日鉄コミュニティ共同事業体」のうち、「日鉄コミュニティ株式会社」は日鉄興和不動産株式会社が100%株式を保有する子会社であります。つまり、1者見積もりを提出した会社の子会社が今回指定管理者として指定されることなったわけであります。

 

さらに、今回「アクティオ日鉄コミュニティ」が提示した指定管理料は1億584万6千円。上限額が1億604万3千円ですから、まさにほぼ見積り額どおり、上限額に対して99.8%の指定管理料ということであります。

 

まさに、絵に描いたような出来レースと思わざるを得ないような結果であります。これで、果たして適正な指定管理者の選定と言えるのでしょうか。何のための公募選考だったのでしょうか。初めから、指定管理者が決められていたとすれば、公募を行う必要はなかったのではないでしょうか。本市は最近になって、やっと指定管理者の指定にあたって公募を取り入れるようになりましたが、初めから事業者が決まっていたとするならば、公募を行わず、従来からの特命指定をし、その理由は「再開発事業でお世話になった大手デベロッパーの子会社にお願いしたい」とすればよかったのではないでしょうか。あまりにも、不透明、不適切な選定事務としか言いようがありません。

 

3)異常に低い稼働率設定(20%) 

 

 次に、手続きの不透明性、妥当性についての二番目の問題点は、1者見積もりしか行わなかった指定管理料の上限額が、ほんとうに適正なのかということであります。

 

 市民交流プラザの指定管理料の上限額は、2年4か月で1億604万3千円、年間で言えば4544万7千円。実際の収支規模は年間6038万7200円ですが、今回の指定管理では利用料金制を採用しておりますので、この6038万7200円からカフェの収入1320万円、貸室の利用料収入と自主事業収入174万200円、合計1494万200円が差し引かれ、その結果指定管理料は4544万7千円となるというものであります。

 

この見積もりで示されている貸室の利用料収入から計算すると、稼働率(=回転率 使用コマ数÷使用可能コマ数)は、わずか20%しかないということになっています。ちなみにハーモニーホール会議室の2018年度の回転率は、大会議室が44%、中会議室が47%、小会議室が40%となっております。また、同じ小田急相模原駅相模原市の再開発ビル内の公共施設は利用率(利用件数÷開館日数)しか公表されておりませんが、利用率は多目的ルームが98.8%、ミーティングルームは96.7%となっており、本市のハーモニーホールの回転率と利用率の相関から推測すると、おそらく回転率は50%を超えていると思われます。

 

駅前の公共施設の貸室の稼働率が20%しかないというのは、常識的に考えてありえません。ではなぜ、稼働率を低めに見積もることが問題かと言えば、今回は利用料金制が採用されていますので、収入見込みが少ないほど、事業者が受け取る指定管理料は多くなります。さらに稼働率20%を超える分は、すべて事業者の利益となるわけであります。

 

4)異常に高い維持管理費

  

また、施設管理委託費年間455万7000円も過大に見積もられている可能性が大であります。これは、清掃業務や警備業務等であると説明されております。市民交流プラザの延床面積は351.64㎡しかありませんが、延べ床面積が1182.31㎡ある上下水道局庁舎の維持管理費は事業者提案書では年間328万8千円となっております。上下水道庁舎は市民交流プラザより延床面積が約3.4倍も上回っているにもかかわらず、維持管理費は市民交流プラザの方が高くなっているのであります。

 

おそらく維持管理業務は、マンション管理を専門とする日鉄コミュニティが担当することになるのでしょう。一方、日鉄コミュニティはこの再開発のマンション部分の管理会社でもあります。もし、マンション部分と市民交流プラザを一体的に管理するということならば、実際の管理費用は大幅に縮減でき、利益を最大化することができるでしょう。これでは、まさに「お手盛り」の見積もりではありませんか。

 

以上のように、過大に見積もられた指定管理料の上限に対し、その見積もりを提出したとされる会社の子会社を含む共同事業体が、見積もり額とほぼ同額の指定管理料で指定管理者と指定されるという今回の事態は、あまりにも不透明であり、不適切と言わざるを得ません。

 

2.事業者としての適性

1)日鉄コミュニティは、国土交通省から行政処分を受けていた

 

 

次に、二番目の問題点として事業者の適性についてであります。今回本市が指定管理者に指定しようとしている「アクティオ日鉄コミュニティ共同事業体」のうち、日鉄コミュニティ株式会社は本年4月15日に国土交通省関東地方整備局長から「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に基づく行政処分、指示処分を受けております。

 

なお処分理由については、「被処分者が管理事務を受託している複数の管理組合において、管理組合財産を、被処分者の元従業員が不正に着服し、管理組合に損害を与えた。」とのことであります。

 

くしくも、日鉄コミュニティ株式会社が行政処分を受けた本年4月15日は、本市の指定管理者選定委員会が開かれ、公募に応じた事業者からプレゼンが行われた日でありました。市当局はこの行政処分について、つい最近まで知らなかったとのことありますので、日鉄コミュニティ株式会社はこの事実を本市に報告することなく、プレゼンに臨み、それ以降も報告することなく、指定管理者選定委員会は4月22日に同社を含む共同事業体を指定管理者として内定しております。

 

2)「各種法令を遵守している者であること」(市の指針)

 

 

本市の「公の施設の指定管理者制度に関する指針」における「申請者の資格」では、「指定管理者の候補者として申請する事業者は、次の各号に該当する者とする」としてその中には、「各種法令を遵守している者であること」が示されております。

 

しかし、今回の指定管理者の公募にあたっての募集要項の「応募資格には、「各種法令を遵守している者であること」は記載されておりません。故に、当局は日鉄コミュニティ株式会社は応募資格に抵触していないという見解のようですが、募集要項の欠格事項に記述がないことをもって、直近において法令違反を犯した事業者を指定管理者として指定することは、果たして適切なことなのでしょうか。

 

私は、日鉄コミュニティが今回、座間市の公の施設である市民交流プラザの指定管理者となることは適切ではないと考えるものであります。

 

3.審議及び審査にあっての当局の情報の非開示性

 

 

1)選定委員会の議事録は「黒塗り」

 

 

今回の議会審議及び審査にあたって、私は指定管理者選定委員会の議事録を資料請求致しました。ところが、出されて来たものは、ほぼ黒塗り状態で、特に選定委員会委員の質問に対する事業者側の回答は、まったく明らかにされませんでした。

 

また、都市環境常任委員会において、委員会の総意で、今回指定管理者に指定しようとしている事業者の、事業計画書及び収支計画書の提出を求めたにもかかわらず、当局はその提出を拒否しました。

 

こうした状況で、一体どうやって、指定管理者としての適否を判断すればいいのでしょうか。特に今回は、本市では初めて利用料金制度が導入されたにもかかわらず、「アクティオ日鉄コミュニティ共同事業体」は、利用料金を一体いくらと設定しているのかは、本会議採決が行われる本日に至っても、明らかにはされておりません。

 

2)情報公開条例の運用を誤っている

 

 

当局は、指定管理者選定委員会の議事録や事業者の事業計画書等には、「企業のノウハウ等の非公開情報が含まれている可能性が高いため」との理由を述べていますが、座間市情報公開条例の運用上からも適切な運用とは言い難いものであります。

 

座間市情報公開条例第7条第2号では、「法人その他の団体に関する情報」について、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」を非公開情報と規定しております。

 

しかし、今回の場合、当局は、この情報公開条例第7条第2号の規定を厳格に適用するのではなく、「非公開情報が含まれる可能性がある」として、すべてを非公開としております。いわば、「〇〇〇のおそれがあるもののおそれがある」いった、わけのわからない理由ということになります。

 

一方、本市が作成している「座間市情報公開条例の解釈及び運用基準」では、条例第7条の運用について、「行政情報の公開、非公開の判断を迅速かつ的確に行うために、本条各号に規定する非公開情報に該当する文書を職務上作成又は取得した時点で、(中略)本条何号に該当するかを記入することとします」とあります。

 

つまり、この基準からすれば、今回の場合、選定委員会の議事録を作成した段階で、事業者の事業計画を取得した段階で、公開部分、非公開部分の判断をすべきものであるということであります。 

 

  それを行わず、単なる可能性一般で、すべてを非公開とし、常任委員会の資料請求にも応じなかったことは、到底容認できるものではありません。

 

指定管理者選定委員会でどのような議論の末、事業者が決定されたのか、指定されようとする事業者は、どのような管理・運営を行おうとしているのか、一切あきらかにされず、最低限の情報開示も行われずに、どうやって議会は審議・審査を行えばよいのでしょうか。こうした当局の情報隠しは、適正な議会の議決権の行使を妨げるものであると言わざるを得ませんし、厳しく非難されるべきものであります。

 

4.どうすべきだったのか

 

以上、「1.手続きの不透明性と妥当性」「2.事業者としての適性」「3.審議及び審査にあっての当局の情報の非開示性」の三つの観点から反対の理由を申し述べて参りましたが、最後に、「ではどうすべきだったのか」ということについて私の考えを申し上げておきたいと思います。

 

まず、指定管理料の上限設定にあたって、事業者から見積もりを徴取するならば、複数者からの見積もりを徴取すべきであったということであります。複数者からの見積もり徴取について、昨年12月議会において当局は、「公募の前に施設の詳細を公表し説明するということは難しい」として、小田急相模原駅前西地区市街地再開発組合の参加組合員である事業者に協力をただいた」と答弁されておりますが、行政手続の透明性と正当性を担保するためには、複数者からの見積もりが必須であったと思います。

 

もし、見積もりを徴取しないとするならば、公募には応じないという条件でコンサルタント会社とアドバイザー契約を結び、指定管理料の上限額を定めるという手法もありますが、本件のような年間指定管理料が4500万円程度の施設で、コンサル契約を結ぶというのは費用対効果の点から適切ではないでしょう。

 

また、見積もりも徴取しない、コンサル契約も結ばないとすれば、本市の職員が見積もりを行い指定管理料の上限額を設定するという手法も考えられます。これは、大変手間のかかることかもしれませんが、その手間を惜しみ、特定の事業者に丸投げするようなやり方と比べるとはるかにましであります。

 

当たり前の話ではありますが、指定管理料は税金であります。今回のやり方は、市当局が手間を惜しんだ分を市民の税金で穴埋めするようなものであります。

 

そして、私が本来とるべきだった思う手法は、指定管理者制度ではなく市の直営方式で管理・運営を行い、カフェについては市内の社会福祉法人NPO、その他福祉団体等へ委託するというやり方が最適だったと思います。

 

当局は、市民交流プラザの管理・運営について、市が行った場合と民間が行った場合の官民コスト比較を行わなかったと答弁されておりますし、直営方式の検討を行った形跡もありません。

 

これだけの指定管理料を民間事業者に支払うならば、おそらく市の直営方式の方が、管理・運営経費は安くなり、分野ごとの個別の委託契約を結べば、市内法人や団体との連携のもと、「市民の新たな交流の場」である本施設の設置目的を最も有効に達成できたのではないかと思う次第であります。

 

昨今、本市においては指定管理制度のガイドラインである「公の施設の指定管理制度に関する指針」においても、民間活力導入ガイドラインである「民間活力有効指針」においても、「経費の縮減」という言葉が削除されてきております。

 

元々、国や地方自治体における民間活力導入は「経費の縮減」、すなわち「民間の方が安い」というのが、最も大きな論拠とされてきました。ところが、今やこの「経費の縮減」はなくなり、一昨年の上下水道局庁舎も同様ですが、市の直営方式の方が安価であるという試算を行いながら、それもよりも高いリース方式の方が選択され、「民間の方が高い」ということが、本市においては常態化しつつあります。

 

私も一概に民間活力導入がすべて「悪」であるとまではいいません。しかし、民間活力導入を見きわめる市職員の能力が追いつかなければ、あるいは、それをチェックする議会の監視機能が追いつかなければ、市民の税金が浪費されてしまうということを是非とも肝に銘じていただきたいと思います。

 

賢明なる市議会議員の皆様におかれましては、満足な説明も情報開示を行わなかった本議案について、議会の良識を示す上でも、否決の決定を下されますよう、お願いを申し上げる次第であります。