2019年度補正予算、2020年度当初予算に関する反対討論

ただ今議題となっております議案のうち、議案第2号、議案第7号について、反対の討論を行います。

 

まず、議案第2号、2019年度の一般会計補正予算についてですが、 今補正の中には、小学校情報通信技術環境整備事業費として1億6212万7千円、中学校情報通信技術環境整備事業費として8860万1千円、合計2億5072万円8千円が計上されております。

 

この事業は、文部科学省の「スクールギガ構想」に基づき、市内の全小・中学校に高速大容量の通信ネットワークを整備するもので、国の2019年度補正予算では2318億円が措置され、本市の財源措置では、国庫補助金が1/2、残りの1/2は全額市債が充当されることとなっております。

 

本事業について、私は次のように考えます。


まず、国の補正予算として妥当性に疑義があります。財政法第29条では、補正予算は「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」となっており、高速大容量通信ネットワークの整備とICT機器の調達が、「予算作成後に生じた緊要な事由」とは思えません。また、緊急性の点から今回の国の補正予算を考えると、昨年10月の消費税率10%への引き上げによる景気後退への対応となりますが、本事業はIT産業に特化した景気対策であり、消費不況に苦しむ国民生活への支援というものではありません。

 

次に、政策の妥当性に疑義があります。本事業は、国の景気対策という政治的意図から出発し、文部科学省トップダウンで決められたため、その効果、活用方法等について、本来独立した行政委員会であるはずの市町村教育委員会の意向や判断が活かされているのかどうか、はなはだ疑問であります。文部科学省は、「多様な子供達を誰ひとり取り残すことのない、公正に個別最適化された学びを全国の学校現場で持続的に実現させる」としていますが、その教育効果については、具体性に乏しいと言わざるを得ません。文部科学省の「学校におけるICT環境の整備状況」によると、プロジェクター、デジタルテレビ、電子黒板などの大型提示装置の整備率では、トップは佐賀県で87.1%、最下位は秋田県の17.3%となっております。一方、「2019年全国学力テスト正答率ランキング(都道府県別/小中学生合算)」では、大型提示装置整備率が最下位の秋田県が1位、佐賀県は43位という皮肉な結果となっていることを肝に銘じるべきだと思います。

 

以上のような点から、本事業は現時点における妥当な支出とみなすことはできませんので、本補正に反対するものであります

 

次に、議案第7号、2020年度の一般会計予算について、反対討論を行います。

 

では、いくつかの事業を具体的にあげ、反対の理由を述べて参ります。


 まず総務費国際交流事業費について、当該年度は米国スマーナ市への中・高生の派遣事業が行われますが、中・高生の派遣にあたって、依然として条件として自己負担約11万5千円やスマーナ市から受け入れに際してのホームスティが条件となっております。かねてより指摘してきたことではありますが、この条件では生活困窮家庭の子どもたちは、実質的には参加の道を閉ざされることとなり、適切な支出とは認めることはできません。本事業はここ数年、教育委員会も関与し、教育的要素も加えられておりますが、一部の子どもたちだけを対象とし、生活困窮家庭の子どもたちを実質上排除する派遣事業は見直すべきであります。

 

次に、同じく総務費文書費についてですが、本市の公文書管理は庁内の内部的規範にすぎない文書管理規程に基づいており、公文書管理条例は制定されておりません。公文書管理法第1条に規定されているように、公文書が「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものである」ことを明記し、市民の代表である議会の議決を経た公文書管理条例の制定を、私は求めて参りましたが、当局は当該年度予算においても条例制定の意向は示しておりませんん。直ちに条例化を進めるべきであります。

 

次に、同じく総務費市民交流プラザ管理運営事業費についてであります。これまで何度も指摘きたところであり、繰り返しませんが、現在のアクティオ日鉄コミュニティ共同事業者体による指定管理は、その手続き及び指定管理者としての適性に問題があり、その支出について認めることができません。

 

次に、同じく総務費住民基本台帳についてでありますが、現行のマイナンバー制度に反対する立場から、適正な支出と認めることはできません。

 

次に、民生費総合福祉センター外装改修事業費についてであります。建設から20年もたたないうちから、外壁タイルの剥離や多目的室のエアコンドレインの不具合が生じるという事態は、経年劣化を差し引いたとしても、建設時の工事の適正を疑わざるを得ません。しかし、当局は今回の外装改修事業の予算だてにあたって、建設時の施工業者等へのヒアリング等を行った形跡は見られません。外装改修事業の予算計上の前に、まずは原因究明と責任の所在を明確にすべきと考えます。

 

次に、同じく民生費生活困窮者自立支援事業費についてであります。おそらく当該年度、予算編成時には想定されていなかったような社会経済状態が進行していくことになろうかと思われます。新型コロナウイルスの感染拡大は、我が国の経済活動及び国民生活に深刻な影響を与えつつあります。内閣府が3月9日発表した2019年10~12月期の国内総生産GDP、季節調整値)改定値は、年率換算で7・1%減となっており、新型コロナウイルスの感染拡大前から日本経済は大幅に落ち込んでいた実態が明らかとなりました。さらに、追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、あらゆる経済指標において大規模な下落が確実に予想される事態になっており、その影響は真っ先に生活困窮者を直撃することは明らかであります。

 

3月3日に厚生労働省より「新型コロナウイルスに関連した生活困窮者自立支援制度の活用について」という通知が発出されておりますが、予算決算常任委員会民生教育分科会の審査では、同制度の「一時生活支援事業」や「住居確保給付金」については、現在たちあらわれているような「休業」や「休職」には適用できないことが明らかとなりました。これは、生活困窮者自立支援法の政令において「離職者」を対象としていることから生じている問題であり、本市当局の運用においては解決できない問題ではありますが、早急な運用改善を国へ求めていくことを要望するものであります

 

次に、同じく民生費障害福祉についてであります。予算決算常任委員会民生教育分科会の審査において、私が、障害福祉サービスに係る事業者職員の処遇改善の加算額が、職員給与等に上乗せされているのかどうか確認しているか、という質問に対して、当局の答弁は「事業者に対する報酬額に含まれているので確認はできない」との答弁でありました。処遇改善の加算分が職員給与に適正に反映されているのかどうかわからないというのは、問題であります。もちろん、元々の事業報酬の額が運営上必要な額であるのかどうか、という根本問題もあろうかと思いますが、最低限、保育サービスの処遇改善加算金と同様に、チャック可能となるよう改善すべきであります

 

次に、同じく民生費児童福祉費についてであります。当該年度より、幼児教育保育の一部無償化が、通年実施されることとなります。一部無償化が行われる前の2018年度の決算数値と、2020年度当初予算を比べ本市の財政負担がどのように変化したのか、予算決算常任委員会民生教育分科会の審査において質したところ、歳入において4億2687万9千円の増となったものの、歳出においてはそれを上回る5億5333万9千円の増となっており、差引1億2646万円の負担増となったことが明らかとなりました。このうち、公立保育園については無償化に係る経費のすべてを本市の一般財源で賄わなければならず、問題と言わざるを得ません。ご承知のとおり、国は、通貨政策や財政金融政策を活用し、財政出動することはできますが、地方自治体にはそれはなく、財源の範囲内でしか支出することはできません。幼児教育・保育の一部無償化は、国の制度変更にかかわらず、国が財源に責任を持たない姿勢は厳しく批判されなければなりません。当局においては、引き続き国が財政責任を果たすよう、求めていく事を強く要望するものであります。

 

次に、土木費都市再整備計画推進事業費についてであります。小田急相模原駅前西地区市街地再開発事業における商業・公益棟と相模原市の再開発ビルとを結ぶ、いわゆるペデストリアンデッキについて、歩行者上空横断施設詳細委託料1430万円が計上されております。この歩行者用上空横断施設については、ここ数年間、相模原市との協議が整わず、工事着工へ至っておりません。調整が整っていない理由は、当初道路法上の施設、すなわち階段を備えた道路歩道橋としての整備を考えていたものを、階段のない建築基準法上の施設へと変更せざるを得なくなったことによるものであります。

 

しかし、この歩行者用上空横断施設の設計委託は執行額ベースで、2016年度1045万4000円、2017年度2160万円、2019年度1899万7千円と、これまでに5105万1千円がつぎ込まれ、2020年度当初予算では新たに1430万円が計上されておりますから、設計経費だけですでに6535万1千円となっております。なぜ、協議が整っていないにもかかわらず設計予算を重ねて執行してきたのか、理解することはできませんし、事務執行の適正さが問われることとなります。また、かねがね指摘しておりますとおり、この歩行者用上空横断施設の整備することについては、その必要性、有効性において疑義があります。すでに設計経費だけで約6500万円、今後さらに本体工事で約3億~4億と見込まれる本施設については、ここでしっかりと見直し、断念すべきであると申し上げておきたいと思いますし、予算措置に反対するものであります。

 

次に、同じく土木費座間南林間線改良事業費についてであります。2020年度当初予算では1億7662万2千円が計上されておりますが、2019年度執行できなかった土地購入費が引き続き計上され、また新たに小田急線踏切部分を立体交差とするための設計にかかわる負担金5000万円が計上されております。

 

ご承知のとおり、都市計画道路座間南林間線の未整備部分については、都市計画法に基づく変更手続きが終了しておりません。都市計画の決定手続きにおいては、法第16条第1項に規定に基づき、都市計画案作成の段階で、公聴会等により住民の意見を反映することとされており、法第17条第1項及び第2項の規定に基づき、公聴会を経た都市計画案は公告・縦覧され、これについて住民は意見を提出することとなり、法第18条第1項及び法第19条第1項の規定に基づき、住民から出された意見とともに都市計画案が都市計画審議会に提出され、専門家の審議により都市計画が決定されることとなっております。

 

しかし、現状は法に基づく都市計画変更案すら作成されていない状況であります。そのような中で、用地の購入や踏切立体交差の設計負担金を支出することは、住民参加の都市計画決定という法の趣旨を逸脱するものであり、適正な予算の執行とは認められません。

 

次に、教育費についてでありますが、小学校、中学校の施設整備事業費について2020年度当初予算では、小学校が1億2874万9千円、中学校が1191万6千円、合計1億4066万5千円が計上されております。これは、2019年度補正予算での前倒し分1105万3千円を含めても約1億5千万円ほどであります。これをここ数年の決算数値と比べて見ますと、2017年度決算では5億1979万1千円、2018年度決算では2億4576万円となっており、通年より減少しており、さらに、2019年度~2021年度の実施計画の数値=5億4665万5千円と比べると大幅に落ち込んでおります。

 

その要因は一体何かと考えますと、冒頭に述べた2019年度補正予算における小学校・中学校情報通信技術環境整備事業費、合計2億5072万円8千円が急遽盛り込まれたものによるものではないか、と思われます。つまり、スクールギガ構想という名のもとに、この高速校内LAN整備が、いわば国策として割り込んできたために、当初実施計画にあられていた施設整備事業が後回しとなったのではないかと、推察することができるわけであります。

 

私は、本討論の冒頭で補正予算に盛り込まれた高速校内LAN整備について、「現時点において妥当な支出とみなすことができない」と反対の意思を明らかにしましたが、それは、小・中学校の施設整備事業がこれによって滞るならば、経費支出の優先順位が違うと、思うからであります。特に教育委員会に置かれましては、独立した行政委員会として、本市の児童・生徒、教職員の実情を応じた教育環境整備を、国から言われるというだけでなく、自主的主体的に判断し、進めていただきたいと思います

 

以上、2020年度の一般会計予算に反対する理由を、事業ごとに具体的に列挙し、説明致しました。皆様のご賛同をお願いし、私の反対討論を終わります。