2021年9月 討論

2020年度一般会計決算の認定についての反対討論

座間市職員定数の一部を改正する条例についての賛成討論

 

 ただいま議題となっております議案、陳情のうち、議案第43号についての反対討論、議案第51号については、原案に賛成し、修正案に反対する討論を行います。

 

2020年度一般会計決算の認定についての反対討論

 

 まず、議案第43号、2020年度の一般会計決算の認定について、反対の討論を行います。

 

座間市政史上、最大の決算

 

 当該決算年度の歳入総額は591億6702万2千円、歳出総額は572億4813万8千円となり、歳入・歳出ともに座間市政史上、最大規模の決算となっております。しかし、これは、新型コロナウィルス感染症対策に係る経費、特に国の施策として、国民一人あたり10万円を給付する特別定額給付金給付事業132億6142万6715円を始め、子育て世帯への臨時特別給付金給付事業費1億5887万9775円、ひとり親世帯臨時特別給付金給付事業費1億2502万1420円などの給付金や、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金12億5694万7千円などにより、一時的に歳入・歳出規模が膨れ上がったことによるものと言えます。

 

 故に、総額規模では史上最大とは言え、これまでの決算との比較が非常に困難なものと言えますが、今後のことを考えるならば、「新型コロナウイルス感染症対策」という枕言葉が付けられた各種の事業が、当該年度限りの一時的・臨時的なものに留まるのか、それとも今後も恒常的なものとならざるを得ないのか、ということは、今後の本市の財政運営においても、重要な要素となることは間違いありません。

 

 こうしたことから、当該年度決算を審査するうえで、私の着目点の一つは、新型コロナウイルス感染症対策に、本市はどのように取り組み、どのような成果又は課題があったのか、という点であります。

 

本市における新型コロナウイルス感染症対策の成果と課題

 

当該決算年度、国は特別定額給付金などの給付金以外に、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金4兆5千億円を措置しました。当該決算年度、本市における同交付金の交付額は12億5694万7千円で、本交付金と市単独財源を合わせて歳出した新型コロナウイルス感染症対策に係る事業は53事業、事業費の総額は20億4023万6993円となっております。

 

 このうち、消毒や換気等に係る備品購入費以外で、政策的な判断が必要とされた事業を見ていくと、児童・生徒一人一人にタブレット端末を貸与する小・中学校パソコン機器導入推進事業費は、子どもたちの学ぶ権利を保障をするものであり、また、市内消費の喚起を目的としたプレミアム付商品券事業費や助成額を5万円から25万円に引き上げた住宅リフォーム助成事業、前年度同月比で30%以上の事業収入が減少した中小企業へ10万円を給付する中小企業等緊急支援給付金給付事業などは、地域経済の下支えに貢献するものであり、妥当な政策判断であったと思います。

 

 一方、新型コロナウイルス感染症対策に係る事業の中で最も事業費が多いものは、「電子計算業務費」3億8389万1420円で、内訳は「テレワーク環境用パソコン」の購入費が2億6697万1540円、「テレワーク環境構築委託料」が1億1691万9880円となっております。

 

 本事業は、職員用のパソコンを従来のデスクトップ型からノート型に変え、テレワークにも対応できるよう環境整備を行うというものでありますが、元々は2021年度から市単独財源・リース方式で整備する予定で検討が開始されていました。それが急遽、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の計画事業として、調達方法をリース方式から備品購入に改め、テレワーク環境構築委託も当該決算年度に前倒ししたものであります。また、事業費の全額は同交付金で賄われております。

 

 問題は何かと言えば、本来、市単独財源で整備しようとしていたものを、同交付金の計画事業とすることにより事業費の全額を交付金で賄ったということであります。確かに、「この際だから」ということで、国の交付金を使って財政効率を高めるという意味では有効かもしれません。しかし、新型コロナウイルス感染症対策としての、同交付金の使途としては、妥当性に欠けると思います。 また、当該決算年度の12月補正予算で措置され、次年度に執行が繰り越された商工会補助事業5180万円も同様のことが言えます。

 

 事業費は両方合わせると約4億3500万円余、この財源は、コロナ禍で苦しむ市民・事業者のために使うべきだったのではないでしょうか。例えば、2回目の中小企業等緊急支援金や、高齢者施設や障がい者施設等でのPCR検査の社会的検査、公費負担とならないPCR検査に対する助成、水道料金の福祉的減免の拡大など、コロナ禍に苦しむ市民に寄り添った事業展開が求められていたと考えます。よって、当該年度の本市の新型コロナウイルス感染症対策に係る経費の支出のうち、政策的判断が求められた事業においては、妥当性に欠けるものがあったと言わざるを得ません。

 

遠藤市政の総決算となる2020年度決算

 

 次に、当該年度の決算審査にあたって、私のもう一つの着目点は、当該決算年度である2020年度は、2011年度から2020年度までを計画期間とする第4次座間市総合計画の最終年度であることであります。昨年9月に行われました市長選挙では、現職の遠藤三紀夫氏が落選され、佐藤みと新市長が当選されましたが、当初予算の編成は遠藤前市長が行い、離任前に11度にわたり補正予算を編成しておりますので、基本的には「遠藤予算の執行」ということになります。

 

 したがって、3期12年市長を務められ、自らの任期中に第4次座間市総合計画を策定し、それに基づいて行政事務を執行したであろう、遠藤市政の総決算となる決算であります。そうした点から、この10年間で座間市は、どのような状況となったのか、検証しながら審査にあたりました。

 

投資的経費の増加

 まず、この10年間の大きな変化の一つ目は、投資的経費の増加にあります。2001年度~2010年度までの本市の普通建設事業の総額は、153億9997万円であったものに対し、2011年度~2020年度までの総額は、253億1818万7千円となり、額にして約100億円、率にして64%も増加しております。

 

 もちろん、市民サービスに必要なインフラ整備の費用となる投資的経費が、増加することが、一概に悪いとは言えません。問題は、本市の財政力とのバランスと事業規模、及び事業の内容の精査がしっかりと行われているかどうか、という点にあると思います。

 

 例えば、当該決算年度では、キャンプ座間返還地公園、広場、緑地等整備事業費で3億3464万3408円が執行されておりますが、本事業は2017年度実施計画段階では事業費総額の見込みは4億9千万円であったものが、2020年度実施計画段階では8億5千万円となり、現時点での総事業費の見込みは9億7千万円までに膨れ上がっております。

 

 本事業は、キャンプ座間の一部が米軍管理から返還されることに伴い、本市が策定した「キャンプ座間チャペル・ヒル住宅地区返還跡地利用構想」に基づくものであります。

 

 ちなみに、同じく同構想に基づく施設整備事業として、新消防庁舎建設事業が、この10年間の中で行われました。同事業は2012年基本構想段階では事業費の総額見込みが16億3千万円であったものが、2013年度基本計画段階では18億円となり、さらに2014年基本設計段階では20億8千万円となり、最終的には総事業費は約23億円までに膨れ上がっております。

 

 返還跡地利用構想では「基本的な考え方」として、「施設整備等にあたっては、市の財政負担を極小にする」としながら、事業費をここまで拡大したわけですから、前市長にとってはよほどの思い入れがあったのでしょう。しかし、これらの事業規模の拡大は明らかに過大投資であると言わざるを得ません。

 

 話を公園整備に戻しますと、この10年間で新たな都市公園の整備面積は、38460㎡で、総事業費は25億4437万円にのぼります。一方、公園の維持管理経費はどうなったかと言えば、、2010年度決算における公園維持管理経費は1億2216万円、2020年度が2億858万円ですので、この10年間で8642万円の増となっておりますが、現状は人員体制でも、財政面でも。十分とは言い難いことが決算審査で明らかとなりました。

 

 こうした中、現在、公園維持管理経費に充当するためとして、公園駐車場の有料化が進められようとしておりますが、このような過大な建設投資をしながら、今度は「維持管理経費が足りないので駐車場を有料化したい」というのは、本末転倒、市民にとっては納得できるものではありません。過大投資のつけを市民に負わせるのではなく、今後の投資的経費の在り方を見直しながら、必要な人員と必要な予算を確保すべきであります。

 

再開発事業の赤字を埋めるための保留床の購入

 次に、過大な投資的経費のもう一つの実例をとしては、小田急相模原駅前西地区市街地再開発事業があります。本事業は、1993年に都市計画決定が行われましたが、対象となる地権者の合意がとれず、計画は凍結状態にありましたが、2014年に対象地区を絞り、事業を再スタートさせました。

 

 本事業は、市街地再開発事業の第1種事業、権利返還方式によって施行されました。権利返還方式とは、土地の高度利用によって生み出された新たな床、(これは保留床と呼ばれておりますけれども)、これを新しい居住者や営業者などに売却し、事業費を捻出し、従前からの土地所有者に対しては従前資産の評価に見合う床、(これは権利床と呼ばれておりますが)これを受け取ることができるという仕組みであります。つまり、保留床の売却が事業の採算性を担保するものであります。

 

 2014年、事業の再開にあたって私は、事業の採算性、特に商業棟の保留床売却の見通しについて質したところ、当時、市当局は「保留床の取得予定者として参加組合予定事業者が選定されていることから、採算性は支障がない」と答えていました。

 

 しかしながら、商業棟の延べ床面積1,951平方メートルのうち、店舗は1階部分のわずか481平方メートルのみで、商業棟の約25%にすぎません。一方、座間市の本来の権利床面積は147平方メートルにすぎないものを、その10倍に当たる1,448平方メートルを約7億3000万円で買い取ることとなったわけであります。事業の採算性に支障はないという話は一体どこへやら、悪い意味で私の懸念は的中し、再開発事業の赤字を埋める形で、市が保留床を買い取るということとなったわけであります。

 

 本来なら、再開発組合への市負担金は約8億4000万円(国庫補助1/2 実質4億2000万円)だけとなるはずだったのですが、これに保留床の買い取りが加わり、事業費の総額は、15億7000万円まで膨らんでおります。

 

設計委託だけで6回も繰り返される

 

しかも、関連する事業費を加えるとの総額はさらに膨らむことになります。関連する事業費とは、本市の商業・公益棟と相模原市の再開発ビルとを結ぶ「歩行者用上空横断施設」=いわゆる「ペデストリアンデッキ」の建設であります。建設事業費見込みは約3億円とされていますが、ここ数年、設計予算が毎年繰り返し計上されております。

 

 当該決算年度では、歩行者用上空横断施設詳細設計委託料429万円が執行されていますが、今議会の審査では、2016年度~2021年度まで設計委託等は、6回も繰り返され、設計関係だけで契約額の総額は7895万1200円となっていることが明らかとなりました。

 

 これは、相模原市及び相模原市側の再開発ビルのマンション管理組合との協議が整わず、ペデストリンデッキから市道7号線に降りることのできる階段付きの道路法上の施設から、階段のない建築基準法上の施設に変更したことによると当局は説明をしておりますが、では、なぜ、相模原市マンション管理組合との協議が整っていないにもかかわらず、何度も設計予算を計上し、執行してきたのでしょうか。

 

最近、本議会においては「適正なプロセスを踏んでいない」という主張を数多く聞かれるようになりましたが、まさに、これこそ適正なプロセスを踏まなかったことにより、無駄な公金支出となってしまった典型例ではありませんか。

 

ペデストリアンデッキはほんとうに必要か

 

 また、これだけの費用をかけながら、どれほどの有用性があるのか、という点でも、はなはだ疑問であります。当局が行ったペデストリアンデッキを使用する歩行者数の想定でも、1日あたり平日でわずか803人、休日で923人となっております。(1時間平均33人/24H 44人/18H)

 

 これでは、地上部分の交差点の歩行者交通量の緩和に寄与するとは、到底思えませんし、座間市の商業・公益棟には、商業施設がほとんどありませんから、回遊性を確保することもあり得ません。果たして、費用対効果の点から、市民に対して説明ができるのでしょうか。よって、ペデストリアンデッキの建設については見直しをすべきであります。

 

都市計画道路座間南林間線 事業費の総額がわからないにもかかわらず、都市計画の手続きだけが進んでいる

 

 次に、今後、投資的経費が増大すると思われる事業として、都市計画道路座間南林間線整備事業について述べたいと思います。

 

 都市計画道路座間南林間線は、ひばりが丘1丁目の大和市境から座架依橋までの全長5,880メートルの路線で、1956年に都市計画決定されております。このうち、県施工と市施工を合わせて4,300メートルが整備済みで、市施工では大和市境から市道13号線までが1976年、市道13号線から17号線までがそこから20年後の1996年に開通をしております。県施工では、厚木市境から市道28号線までが1992年に、市道28号線から県道相模原茅ヶ崎線までが2003年に開通をしております。その結果、未整備区間は県道相模原茅ヶ崎線から市道17号線までの1,580メートルとなっております。

 

この未整備区間について、市当局は当初、都市計画道路としての整備ではなく、市道4号線視距改良工事として、小田急線踏切の拡幅及び道路の拡幅を行うとしていました。これは、第4次座間市総合計画の戦略プロジェクトにも明記され、一定の用地買収も進んでいましたが、2016年に、県との協議が整ったとして、県道相模原茅ヶ崎線から県道51号線入谷バイパスまでを県施工で、入谷バイパスから市道17号線までを座間市施工で整備をするという方針に変更しております。

 

 その後、都市計画の変更決定が行われていないにもかかわらず、用地買収を行い当該決算年度では、土地購入費として8800万円が執行され、2020年度までに土地開発公社による先行取得も含めて9400㎡、約6億7千万円が費やされております。

 

 この都市計画道路座間南林間線の市施工部分の総事業費の見込みついては、小田急線踏みきり部分の立体交差をアンダーパス方式にするだけで、約27億円という概算数値が2016年に示されておりますが、その他の用地買収費や道路整備費も合わせて総額いくらとなるのかについては、現時点においても市当局は明らかにしておりません。

 

 2019年3月議会の私の質問に対し当時の都市部長は「都市計画変更の手続きをするまでの間に概算をお示ししたい」と述べられております。曲がりなりにも本会議における答弁でありますので、誠実に履行すべきでありますが、残念であります。

 

 問題は何かと言えば、総事業費の見込みが全く明らかにされていないにも関わらず、都市計画の変更決定という行政手続きがだけが進められてよいのか、ということであります。

 

 今後本市のインフラ整備は、公共施設再整備計画に基づく施設の更新、維持管理に多額の経費を必要とすることは言うまでもありません。そうした中で、都市計画道路座間南林間線の整備だけにおそらく50億円を超えると思われる建設投資をすることが、ほんとうに必要なのか、あるいは可能なのか、ここでしっかりと精査すべきであり、私は事業の再検討が必要だと考える次第であります。

 

進まなかった高齢者福祉、保育園待機児童の解消

 

 以上のように、この10年間、遠藤市政のもとで、本市では、基地の返還地や駅前再開発、大規模幹線道路の整備に係る公共施設整備については、過大な建設投資が行われ、今後もおこなわれようとしておりますが、一方で、この10年間、高齢者福祉や保育に関する重要施策は、進んでおりません。

 

 第4次座間市総合計画の戦略プロジェクトの中では、高齢化社会の到来の中で、「高齢者の自立した暮らしを応援します」として、「高齢者地域見守りネットワーク事業」が掲げられておりました。しかし、いくつかの地区でモデル事業は行われましたが、市内全域に展開されることはなく、最終的には事業自身が廃止されてしまいました。

 

 保育の分野では、同じく戦略プロジェクトで「保育園の建て替えを進めます」として、公立保育園の一部を民営化し、国庫補助を活用して定員を倍増し、保育需要に対応するという計画が示されました。しかし、この10年間実行されることなく、その結果、2019年、2020年と2年連続、神奈川県下待機児童数ワースト1という、状況に陥っております。

 

市職員の過重な負担 労働環境の悪化

 

 また、この10年間で職員の労働環境も大きく変化してきております。今定例会でもお示ししたように、メンタルによる療養休暇取得者と休職者が急増し、特にメンタルによる休職者は、2011年が6人であったものが、当該決算年度である2020年度では20人と、全国平均の2.6倍。ストレスチェックによる高ストレスに該当した割合は、全国平均が3.4%であるのに対し本市職員は、18.5%と極めて高い割合になっております。

 

 この原因は、行政需要が拡大し、事務量は増加する一方にもかかわらず、職員数は2011年度が814名 2020年度が809名と、この10年間、増えるどころか逆に削減されてきたことによることは、明らかであり、適正な人員体制とは言い難い状況にあります。こうした状態は、本市職員に過重な負担がかかっているということに留まらず、行政組織としての事務の遂行に支障を来し、ひいては市民サービスの低下につながりかねないという深刻な状況でもあります。本来なら、人件費の削減が条件となっている退職債の起債が終了した2015年度以降は、増員の方針へと転換し、定数条例の改正とそれに基づく定員管理計画を策定すべきであったにもかかわらず、それを怠り、今日のような切羽詰まった状態まで放置していたことは、遠藤市政の人事行政の失敗と言わざるを得ません。

 

 以上、当該決算年度が第4次座間市総合計画の最終年度であることから、この10年間の総決算という視点から、その特徴を述べて参りましたが、財政的にも、政策的にも、さらに人事行政的にも相当な歪みが生じていることは確かであり、その是正こそが今、本市の行政に求められていると思います。

 

こうしたことから、本決算の認定には反対するものであります。

 

座間市職員定数の一部を改正する条例についての賛成討論

 

 本条例の一部改正にあたって市長及び当局は、その理由について、①自治体規模に即していない定数状況、②休職者の増加と常態化、③行政ニーズや災害等の社会情勢の変化、 をあげ、 こうしたことに、「早急に対応すべく体制整備を行う必要があると判断したため」としております。では、この3項目について、私の意見を申し上げて参ります。

 

自治体規模に即していない定数状況

 

 まず①の自治体規模に即していない定数状況についてでありますが、一般的に、職員定数の管理に用いられる手法としては、人口規模や産業構造などの類型により、類似の地方公共団体の職員数と比較するマクロ方式が採用されております。

 

 マクロ方式で見て参りますと、本市の人口1万人あたりの職員定数は、県央7市のうちで最も少ない41.08人となっております。また、全国的に見ても、人口1万人あたりの一般行政部門の職員数は、37.28人で、同規模の51自治体中6番目に少ない状況にあります。

 

 今回の条例改正では「定数40名増」が提案されておりますが、本市を除く県央6市の平均値に基づくならば増員数は76名、県央の同規模自治体である海老名市、綾瀬市伊勢原市の平均値に基づくならば増員数は33名、となり、本市の職員定数を自治体規模に即した定数へと是正とする場合、33名~76名までの範囲が適正かつ合理的な改正範囲ということになります。私自身は、この範囲内で言うならば、76名の定数増が必要と考えますが、当局提案の「40名増」は、それより大幅に少ないとはいえ、適正な数値であることは確認できます。

 

休職者の増加と常態化

 

 本定例会における私の一般質問においても、「職員のメンタルヘルス」というテーマで取り上げましたが、本市のメンタルによる休職者の数は、2011年度が6名、2012年度が5名、2013年度が5名、2014年度が2名、2015年度が6名、2016年度が7名、2017年度が12名、2018年度が13名、2019年度が15名、2020年度が20名、と、近年急激に増加しており、10年前の3倍以上となっております。

 

 これもすでにお示しいたしましたが、10万人率にあてはめた全国平均と比べるとメンタルによる休職者の数は、2.6倍。メンタルチェックによる高ストレスの割合は、全国平均の約2倍となっており、いかに本市職員に過重な負担が生じているのか、ということがわかりますし、定員増による早急な労働環境の改善が求められていると思います。

 

行政ニーズや災害等の社会情勢の変化

 

 1999年に制定された地方分権一括法に基づいて、都道府県から市町村への権限移譲が行われ、総務省の資料のよるとその数は、約80法律、約1070条項に及ぶとのことであります。地方分権一括法の制定から約20年が経過しておりますが、この間、全国的にも地方公務員の削減が続けられ、本市においても2000年度の職員実数は936名であったものが、今年度では809名と127名減となっております。権限移譲により事務量は増加する一方で、職員数は減らされる、というのが一般的な状況となっている中、災害時の対応や、今回の新型コロナウイルス感染症対策という大規模災害級の事態となり、本市においても、新型コロナウイルスワクチン接種推進課の設置など新たな人員体制が必要とされております。

 

 こうした中、総務省の統計によると地方公務員数は、最大時の1994年約328万2千人から、2015年には273万7千人と大幅に削減されましたが、2016年度以降再び増加に転じ、2020年度は276万2千人と5年間で約2万5千人増加しております。

 

 これは、全国的にも各地方自治体が、行き過ぎた人員削減を改め、増大する行政ニーズに的確に対応するため、増員措置をとったことによるものであり、本市の今回の定数増の措置は、遅きに失した感はありますが、時宜にかなった対応であると認められます。

 

 以上、①自治体規模に即していない定数状況、②休職者の増加と常態化、③行政ニーズや災害等の社会情勢の変化 と3つの項目について、私の意見を申し上げて参りましたが、今回の職員定数条例の一部改正は、必要性はもちろんのこと、事態の緊急性及び改正数値の合理性、いずれにおいても妥当な提案であると認め、市長提案の原案に賛成するものであります。

 

修正案に対する反対討論

 

 次に、上沢本尚議員他3名から提出されております修正案について、反対の討論を行います。

 

 本修正案は、座間市職員定数条例第2条第1項で規定する職員定数を、現行の873のままとし、第2項については、原案で示されている定数外として取り扱う職員に関する条文のうち、「職員団体の業務に専ら従事している職員」に関する規定と「併任を命ぜられている職員」に関する規定を削除するものであります。

 

 修正案の最大の問題点は、第2条第1項で規定する職員定数を現行のまま据え置いていることであります。確かに現行の職員定数873名に対し、職員実数は808名で、65名の余裕がありますが、今回40名の定数増が提案されております市長部局は、現行の条例定数537名に対し、職員実数532名と、5名分の余裕しかありません。

 

 本市の職員体制、特に市長部局の現状は、ひっ迫している現状にあります。

 

 今議会でも明らかとなりましたが、本市の公立保育園2園では、今年4月入所選考において、保育士不足により0歳児の受け入れができておりません。

 

 生活援護課においては、生活保護ケースワーカーは法定の人員数に6名足りない状況にあり、これは神奈川県下政令市を除く16市中最大の数になっております。

 

 清掃、学校給食調理員、保育園給食調理員などの現業職場においては、退職者が出た場合、正規職員の不補充を方針としておりましたが、2019年度よりそれを改め、正規職員の補充を行っておりますが、それができなくなる可能性があります。

 

 公園緑政課においては、年間1300件を超える苦情・要望対応に3人しか要員がおらず、その他の業務遂行に支障出ているとのことであります。

 

 その他にも、休職者の増加により、実働人員が減り、業務に影響のでている部署は数多くあり、部署によっては、係員3人体制の係で、2名が育休や休職となり、係長しかいないところもあるといった現状であります。

 

 こうした状況を改善するためには、定数と実数が接近し、職員数の増を行うことができない市長部局の職員定数を増やすしかないにもかかわらず、その条項を削除する修正案を認めることはできません。

 

 その理由について、提出者の一人である上沢議員は、企画総務常任員会において、次のように述べられております。

 

 「第2条第1項の職員定数の改定については、本来の職員の定員管理計画が作成されたのちに、定員管理計画をよりどころとして、職員定数を定めるべきである。」「しかし、令和3年、2021年度以降の定員管理計画は示されていない。」として、「適切、適正なプロセスである定員管理計画が策定されていなので、議会として判断する材料がない。適切なプロセスを経てから再提案されるべき」と主張されておられます。要は、「定員管理計画が策定されていないので、判断できない。」故に「原案から40名の定員増を定めた部分を削除する。」というものであります。

 

 ここで、まず整理をしておかなければならないのは、職員の定数は、条例で定められておりますので、議会の議決事項であります。一方、定員管理計画は、条例で定められた定数、つまり、議会の決定にもとづいて、その範囲内で、実際の職員数=「実数」を定めるもので、これは行政の裁量事項であり、議会の議決事項ではありません。

 

 上沢議員らは、行政の裁量事項である「定員管理計画が作成されたのちに、それをよりどころにして定数を定めるべき」と主張されておられますが、順序が逆です。正確には「議会の議決により定数が定められたのちに、行政の裁量事項である定員管理計画を定める」というのが、本来の適正なプロセスであります。

 

 一方、職員定数を減らす場合は、上沢議員の言うとおり、定員管理計画の策定が先行し、その後に定数条例を議会に提出したとしても、議決されている定数の範囲内でありますので、問題はありません。

 

 しかし、今回は定数増を行うわけですから、定数増に関する議会の議決なしに、定員管理計画の策定が先行するということは、行政事務として、あってはならないことであるいうことを、まずは、自覚すべきであります。

 

 当局は、この定員管理計画について、「2023年度からスタートする第5次総合計画及びそれに伴う機構改革に合わせて改定したい」としておりますが、私は、妥当な判断だと思います。第5次座間市総合計画は、2023年度~2030年度までの8年間の本市の政策・施策体系を定めるものでありますから、これに基づく組織体制と人員体制が決められることとなり、総合計画、組織機構改革、定員管理をセットで定めるという考え方は、極めて妥当な考え方であります。

 

 この場合、課題となるのは、定員管理計画の前計画が2020年度で終了しておりますので、2021年度、2022年度の2年間は定員管理計画が空白期間となってしまうことであります。

 

 修正案を提出した方々を始め、議会の中には、定員管理計画に空白期間が生じることをご心配される意見があります。しかし、先ほども申し上げましたように、定員管理計画はあくまでも行政の裁量事項ですから、たとえ空白期間が生じたとしても、法的にはなんら問題はありません。また、当局が職員採用を行い、職員数を増員する場合は、人件費と連動しますから、年度途中であれば補正予算、年度初めならば当初予算に計上され、議会のチェックを受けることになります。ですから、けっして行政裁量でなんでもできるというわけではなく、チェック&バランスが保たれるようになっているわけであります。

 

 また、そもそも、なぜ定員管理計画の空白期間が生じたかと言えば、その原因は遠藤前市長が、2020年度終了する第4次座間市総合計画に代わる第5次座間市総合計画の開始年度を2年間伸ばし、2023年度からとしたことからであります。総合計画の終了時と定員管理計画の終了時はリンクしておりました。ところが、前市長は在任中、総合計画の2年間の空白期間については、「市政に空白期間を生じさせないために」として2年間限定の「座間市市政運営方針」を策定する旨を明らかにしておりましたが、定員管理計画については、この2年間の空白期間に対応する措置は、あきらかにしておりませんでした。

 

 本来なら、次期総合計画の開始を2年延長した時点で、総合計画の空白期間を埋める「市政運営方針」とともに、定員管理計画の空白期間を埋める何らかの措置(新たな計画、暫定的な指針、空白のままの判断)を講ずるべきであったはずであります。

 

 このように、前市長が具体的な措置を講じなかった定員管理計画の空白については、私は次期総合計画に合わせて行われる組織機構改革と合わせて定員管理計画を定めることでもよいと思いますし、どうしても空白を埋める必要があるとするならば、本条例改正の議決後に、行政の裁量権に基づいて「定員管理方針」とでも呼ぶべきものを策定すればよいと思う次第であります。

 

事実に基づいた健全な議論を

 

 最後に、今回の職員定数条例の改正をめぐっては、様々な意見が出されておりますが、私から一言申し上げておきたいと思います。

 

 議会は言論の府でありますし、議員が議会の中でも、また議会外においても、自らの信念に基づいて意見を表明することは、民主主義にとって大変よいことだと思います。

 

 しかし、この間、一部において見過ごすことのできない、疑問視されるような数字の提示や、事実に基づかない主張などが見受けられますので、残念ではありますが。指摘をし、私の意見を申し上げておきたいと思います。

 

 まず、不適切な数字の提示と思われる意見についてです。それは、「地方公務員の生涯賃金(給与)は約2億5000万円と言われている。また、社会保障費も含めれば約3億円と言われている。もし、40名の職員増をした場合、100億円~120億円の予算が必要となる」という指摘がありました。

 

 これは、定数増が行われた後、実数としても40名の職員を増員し、一人当たりの人件費総額は2億5千万円とした場合 あるいは社会保障費を含めて3億円とした場合、2億5千万円×40名=100億円 3億円×40名で120億円となるというものですが、これは、私に言わせれば、「馬から落ちて落馬する」というか、あるいは「10の10倍は100ですよね」といったたぐいの当たり前の話としか思えません。

 

 100億円~120億円という額の大きさを強調するためのものかもしれませんが、欠けている点は、この額が総予算の中でどれくらいを占めるのか、そして割合は妥当なのか、どうかということです。

 

 生涯給与で計算されておりますので、勤続年数は高卒であれば42年間、大卒であれば38年間ということになります。これを仮に40年とし、現在の予算規模約420億円が変わらないという条件で計算すると、40年間の総予算は1兆6800億円。これに対し100億円というのは、0.6%。120億円は0.7%ということになります。つまり、この0.6%~0.7%の人件費の予算増が適切なのか、そうではないのか、ということを論じるべきであります。

 

 また、定員管理計画については、次のような主張も見受けられました。それは、「ほとんどの自治体では、計画を議会に諮り、議会の承認を得たうえで条例改正を行っています」という、主張です。

 

 しかし、これまで一度たりとも、本市において、定員管理計画が議会の承認事項として、取り扱われてきたことがあったでしょうか。また、ほとんどの自治体が定員管理計画の議会承認を得たあとに条例改正を行っているのでしょうか。議会の「承認」というのは、議会の議決行為の一つです。地方自治法には、定員管理計画の議会「承認」を定めた規定はありませんし、ほとんどの自治体が行っているとは、到底考えられません。事実に基づいた主張をすべきであると思いますし、そうすることにより、実りある活発な議論となると考えます。

 

 以上、議案第51号座間市職員定数の一部を改正する条例について、原案に賛成、修正案に反対の討論を行いました。本市において、職員数の問題は、現在、大変ひっ迫しております。市職員の職場環境の改善のためにも、そして何よりも必要な公共サービスを市民のみなさんに提供するためにも、議員の皆様におかれましては、しっかりとした見識に基づかれ、賢明なご判断をいただきますようお願い申し上げ、私の討論を終わります。