第4次座間市総合計画策定にあたっての提案

第4次座間市総合計画(2011年〜2020年)の策定にあたって、論点として重要と思われる以下の課題について、私なりの意見を交えて議論をしていきたい。

1.コミュニティの形成と市民協働のまちづくりについて
2.市街化調整区域の土地利用方針について
3.めざすべき将来像について


1.コミュニティの形成と市民協働のまちづくりについて

1)地域コミュニティの主体としてこれまで重視されてきたのは自治会組織=「エリア型地域活動」「面的地域活動」であるが、現状、組織率は58.9%(2009年度)と自治組織としての機能が低下している。また、面的な年齢階層的組織である老人クラブ(7.0%)や子ども会(8.3%)、あるいは行政の地域的施策展開と関係する「地区青少年健全育成組織」、「地区社協」などについても、同様である。

2)市民意識の現状は、どうか。概ね5年に一度行われる「市民意識調査」では、「要求や問題を市政に反映させる方法」について、「自分で直接市役所に連絡する」が39.0%で最も多く、調査毎にその割合は増えている。次が「言っても無駄だと思う」で22.2%。3番目が「自治会を通して連絡する」16.7%だが、経年比較では、回数を重ねる毎に低下している。

3)本市におけるコミュニティ施策の経緯は、どうか。
・コミュニティ施策が総合計画に初めて登場したのは、第2次座間市総合計画(1981年〜1990年)で、第1編に「参加と連帯によるコミュニティづくりをめざす都市」として位置づけられた。

・続いて、第2次総合計画の後期基本計画(1985年〜90年)の策定に際して、コミュニティ推進方策(1985年)が示され、その主な内容は、連合自治会を基礎としたコミュニティ住区の設定と住区ごとのまちづくり協議会である。まちづくり協議会とは、「地域において総合的なまちづくりを目的に、地区連合自治組織が中心になって、地域の各種団体と連携して機能し、しかも個人の資格でも参加できる理解と連帯のうえに立って組織されたものをいう」と定義されている。

・続いて、1987年にはコミュニティ施設整備マスタープランが策定され、11住区ごとのコミュニティセンター建設が方針化される。このマスタープランでは、基礎生活圏、第1次生活圏、第2次生活圏、第3次生活圏と生活圏を4分類し、基礎生活圏=地域集会所、第1次生活圏=コミュニティセンター、第2次生活圏=公民館、地区文化センター、第3次生活圏=文化会館、体育館等々、各生活圏ごとのコミュニティ施設、公共施設の配置計画が示されている。

・第3次総合計画(1991年〜2010年)では、施策方向として「1.コミュニティ意識の醸成、2.コミュニティ施設の充実、3.活発なコミュニティ活動の支援」が位置づけられ、まちづくり協議会については「市民主体のまちづくりをすすめるために、まちづくり協議会等への積極的な支援を図ります」と記述されている。

・しかし、第2次で位置づけられた「まちづくり協議会」は定着せず、第3次の途中から実質上「消滅」している。ただ、コミュニティセンターの管理・運営を委託された「管理運営委員会」が「まちづくり協議会」的なものとして「継承」され、ハード面での施設整備ともに、施設管理に特化した住民組織として残っている。


4)テーマ別・課題別市民活動、生涯学習活動の活性化
・一方、エリア型地域活動が衰退する中で、NPO法人や市民団体を担い手とするテーマ型・課題別の地域活動は、環境・福祉・防災など行政施策としても重要な分野をはじめ、様々な分野で活発に進められている。また、公民館3館などを拠点とした生涯学習活動も、個人の趣味や自己実現の範疇を超え、行政施策と密接に連関する分野での活動も数多くみられる。

・市の施策としても、生涯学習サポートセンター(2005年〜2008年)から市民活動サポートセンター(2008年〜)へと支援体制を強化してきている。

5)まとめと提案
・コミュニティ形成において、自治会組織などのエリア型地域活動を「ヨコ軸」とするならば、市民団体などによるテーマ型地域活動は、「タテ軸」となる。

・現状は、「ヨコ軸」=エリア型地域活動が停滞、衰退し、「タテ軸」=テーマ型地域活動が活性化している。一方、行政の関与、予算配分は、依然としてエリア型が重点となっている。

・エリア型地域活動の衰退については、組織率という数の問題に留まらず、市民にとってどれだけ必要とされているのかという内実の問題がある。当たり前の話だが、必要性のない組織は、硬直化するか衰退する。伝統的なコミュニティとして「村落共同体」があるが、これはまさに構成員が生活をする上で、必要不可欠なものであった。それは、水田の水の管理と配分、あぜの整備、農作業における相互支援という労働と生活に根ざしたものであり、さらに祭事や冠婚葬祭など精神的な共同性までおよぶものであったと言える。つまり、コミュニティ形成の社会的・経済的基礎が存在していたと言える。(一方、近代都市部における国家主導の隣保組織としては「隣組組織」があるが、これは戦時体制、国家総動員体制を遂行するための国策に基づくものであり、厳密にはコミュニティ組織とは言いがたい)

・では、地域コミュニティの必要性がないかと言えばそうではない。テーマ型地域活動のように、環境・福祉・防災をはじめ、必要性があるからこそ人が集まり、助け合い、力を出し合う。こうした自発的な意思と力を最大限活かすことが、現代における地域コミュニティ形成と意義ではないか。

・よって、現況と今度の発展の可能性からすれば、今度の行政施策の重点は、「タテ軸」=テーマ型地域活動を伸ばすことによって、「ヨコ軸」=エリア型地域活動の押し上げ、広がりを追求すること。

・また、それに伴いコミュニティ推進施策における資源配分(財源、人)についても、見直しが必要。

・第2次総合計画(1980年代冒頭)において、計画の第一に市民の主体的な連帯による新しいコミュニティの創造と行政の政策形成過程における市民参加を謳ったことは画期的なことであるが、包括的自治を目指したと思われる「まちづくり協議会」の失敗について、しっかりと総括すべきである。(この包括的自治は、近年増えている「都市内分権論」と通底しているように思われる)

・具体的な行政施策展開としては、

ア)基本方針:「新しいコミュニティの形成は、市民自らが自由に主体的に連帯し、地域社会を形成していく(地域課題を解決する)ことにある。したがって、行政としてはそのための条件整備をし、側面からその活動を助成していく」(第2次座間市総合計画)という方針を変える必要はない。

イ)地域課題、行政課題を検討・解決するプラットホーム的な「場」の設置(市民活動サポートセンターの機能に付加する)

ウ)当面、一拠点(市民活動サポートセンター)から出発し、将来的には各住区(コミセン毎)単位でのブランチ化をめざす(=「タテ軸」から「ヨコ軸」への広がり)。

エ)市民と行政が協働して地域課題、行政課題に取り組むための職員意識の変革。


2.市街化調整区域の土地利用について

1)これまでの第3次座間市総合計画、都市マスタープランにおいて、西部地区、中丸地区、キャンプ座間という三つの主要な市街化調整区域のうち、西部地区とキャンプ座間については、比較的方針が明確であったと考える。西部地区については、(どこまで達成されたかどうか別にして)第3次のリーディング事業の一つに位置づけられた「座間西部地域整備構想」。キャンプ座間については、基地返還の状況を見ながら跡地利用計画を定めていくこと。一方、中丸地区については、都市マスタープランにおいて「農住共存地」(土地利用検討地域)を位置づけられたものの、第3次の計画期間においては、大量の残土の搬入、産業廃棄物処理施設、墓地・霊園、病院、老人保健施設、工業団地と、実態上無秩序な土地利用が進んでいる。また、市街化を望む一部地権者による「土地利用研究会」によって、行政との協議が進められているが、その内容は明らかにされていない。

2)中丸地区の土地利用の基本方針が定まっていない中で、遠藤市長は、就任以来、都市計画道路広野大塚線の県道としての整備推進を議会でも答弁している。さらに本年7月21日に開催された県央地区首長懇談会でも要望をされている。また、「土地利用研究会」でもこの地域の市街化区域への編入と、この道路の建設促進を求めているとのことである。

3)以上の経過を総合すると、この地域の地域の土地利用について、市街化調整区域から市街化区域への編入、広野大塚線の整備促進がパックとなり、いわば「開発型」の土地利用を求める流れがあるようである。

4)一方、本市の都市的土地利用が75%以上という現状は、他市に比べても高く、調整区域を減少させることは、都市的土地利用と農業的・自然的土地利用のバランスからしても、妥当性に欠ける。また、本市の誇るべき天然資源である地下水の涵養地としての役割を果たしていると共に、都市化の中での貴重なオープンスペースとなっていることからして、この地域の土地利用の基本方針は農業・農振地域としての保全が第一になると考える。

5)都市計画道路広野大塚線については、県道整備という手法をとるにせよ都市計画道路寺尾上土棚線の北進、座間市部分の当該路線上の膨大な用地買収費、移転補償費は、県財政の現状からして困難と思われ、現実性も、十分な投資効果も見込めない。

6)よって、この地域の土地利用のあり方については、
・まず前提として一部地権者に限らず、「開発か保全か」全市民的な議論に付すべきであること。
・全市民的な議論を経て、土地利用の基本方針を策定すること。
・その上で、当該都市計画道路の必要性を再度判断すること。
・よって、第4次総合計画には当該都市計画道路は位置づけないこと。


3.めざすべき将来像について

1)まちづくりのコンセプトとして、「スモール&スロータウン座間」を提案したい。

2)「スモール」とは、
・外形的な面積からしても非常に小さな都市である。しかし、小さいが故に市民の意思が反映しやすく、行政の監視機能、住民自治の発展にとって有利な条件と言える。
・外形的なものだけでなく、行政組織の効率性を高めることを目指して、その意思の表現として。

3)「スロー」とは、
・地域固有の希少性に着目し、質(市民生活、環境)を高める。
・全国均一のようなまちづくりをめざさず、ローカルを意識したまちづくり。
・ローカル資源に着目し、活かすまちづくり。天然資源としての水と緑(地下水・湧水、斜面緑地、農地、大山を望む景観)。人的資源としての市民活動・生涯学習活動

4)「スモール&スロー」とは、
・「スモール」に表現される「効率性」「利便性」と、「スロー」に表現される地域の「固有性」「独自性」「創造性」を統一する)
・この観点から、まちづくりの施策を推進する。例えば、地下水を主要水源とした水道事業の維持・管理。市街化調整区域の土地利用については、農地の保全を第一とする。市街化調整区域の生活排水処理の基本方策は下水道整備ではなく、合併浄化槽とする。都市計画道路(幹線道路)整備の見直しと生活道路の歩行空間整備。ゴミ処理における資源循環型の推進(生ごみたい肥化)。地域コミュニティ形成の再方針化(協働まちづくり)等々