2024年3月 討論

それでは只今議題となっております議案及び陳情について、賛成並びに反対の討論を行います。

 

2023年度補正予算について

 

まず、議案第5号から議案第9号までの2023年度一般会計補正予算特別会計補正予算及び公営企業会計補正予算については、概ね妥当な措置であると認め、賛成するものであります。

 

2024年度一般会計予算について

 

次に、議案第10号の2024年度の一般会計予算について、賛成の討論を行います。

 

2024年度一般会計の総額は、463億8961万4千円で、対前年度比4.2%、額にして18億9926万1千円の増となっており、過去最大となっております。

 

歳入予算では、市税等の自主財源が233億8108万6千円で、構成比は50.4%。国庫支出金や地方交付税などの依存財源が230億852万8千円で、構成比は49.6%となっており、自主財源比率は対前年度比で1.4ポイント減少しております。

 

自主財源の根幹をなす市税は、総額195億2995万9千円が見込まれ、前年度対比で0.9%と微増となっております。このうち市民税86億2260万8千円は、個人、法人ともにマイナス計上で、額にして3億3194万9千円、率にして3.7%の減となっております。これは、個人市民税が国の定額減税による影響でマイナス計上となったものでありますが、マイナス分は、国からの地方特例交付金により全額が補填されますので問題は生じません。しかし、法人市民税は均等割、法人税割ともに微減とはいえマイナス計上となっております。また、固定資産税全体では約4億円の増収が見込まれる中、唯一償却資産が前年度比5.1%の減となっていること等については、景気動向との関係で心配されるものであります。

 

一方、依存財源では地方消費税交付金が4億214万3千円、12.5%のマイナス、配当割交付金が1億4214万6千円、53.8%のマイナスとなっておりますが、国庫支出金が6億2868万5千円、7.0%の増、地方交付税が5億8087万9千円、18.4%の増で計上されております。

 

本市一般会計予算の特徴

 

次に、歳出予算を見て参りますと、目的別内訳では、構成比で51.9%を占める民生費は240億7946万6千円で、前年度より8億4973万1千円、3.7%の増となっております。

 

また、性質別内訳では、構成比で36%を占める扶助費は166億7947万5千円で、11億3061万2千円、7.3%の増となっております。

 

本市の歳出予算の特徴は、目的別では民生費、性質別では扶助費の構成比率が高いことであります。神奈川県が公表している2022年度決算速報における県内市町村平均値と比べると、民生費で13.3ポイント、扶助費で8.1ポイント高くなっておりますが、これらは、必要とされる福祉関係施策において最低限のサービス水準を確保するための予算措置が、予算編成上、第一義的に求められることによるものであると考えられます。その上で、第5次座間市総合計画に掲げられた政策・施策展開に必要な予算措置をどのように配分するのか、ということになろうかと思います。

 

予算編成方針について

 

佐藤市長就任後の本市の予算編成方針の特徴としては、「「選択と集中」により、必要性や緊急性、費用対効果の高い事業を優先的に実施できる予算計上」ということが掲げられてきました。これは、総合計画の着実な推進を前提としながらも、本市予算構造上の特徴である民生費、扶助費などの義務的経費を必要最低限確保した上で、政策的経費をより効果的に資源配分するためのものであり、適格な予算編成方針であると評価するものであります。

 

では、ざま未来プランの推進とその上での「選択と集中」いう観点から、本予算案を見ていきたいと思います。第5次座間市総合計画=ざま未来プランでは、「目指すまちの姿」を「ひと・まちが輝き、未来へつなぐ」とし、実施計画では「輝く未来戦略」として「特定の政策や施策の枠を超えて分野横断的に取り組む対象事業として11事業を設定し、経営資源を優先的に配分することを方針化しております。

 

2024年度当初予算では、保育所子ども・子育て支援事業費に29億1300万円余、ファシリティマネージメント推進事業費に8億円余、小児医療費助成事業費に6億円余など、「輝く未来戦略」対象事業に総額44億7800万円余が配分されており、「選択と集中」という観点からは、最低限の予算計上がなされているものと認めるものであります。

 

一般会計予算の問題点

 

しかし一方で、保育所子ども・子育て支援事業費においては前年度から始まった保育士確保緊急対策給付金が新年度当初予算では計上されていないこと、ゼロカーボン推進補助事業費では、補助メニューにおいて対象拡大があったものの、予算総額は微増にとどまり、施策目標からすると物足りない規模感になっていること、また、住宅リフォーム助成事業では、対象と子育て世帯に限定したことなど、評価し得ない部分も含まれております。

 

特に保育士確保緊急対策給付金は、保育士給与の上乗せとして年間12万円を、事業所を通さず直接保育士へ給付するもので、処遇改善の透明性が確保され、保育士の労働条件の向上に寄与するものであり、当初予算において予算計上されなかったことは至極残念であります。

 

予算計上を見送った理由について当局は、「本市の保育対策の緊急課題は、待機児童の解消であり、認可保育園の新設等による保育定員の拡大を図ることが優先事項であるため」との説明がありました。確かに待機児童の解消が最優先課題であることは言を俟ちませんが、認可保育園の新設等の施設整備と、保育士確保のための給付金がなぜバーターとなるのでしょうか。仮に、財政上の理由と言うならば、保育士確保緊急対策給付金を含む保育所子ども・子育て支援事業は輝く未来戦略の対象事業であり、経営資源を優先的に配分すること方針化されているものではありませんか。市長及び当局に対しては、再考を求めるものであります。

 

次に、総合計画の各分野別政策・施策の予算計上についてでありますが、そもそも予算計上の必要性のない座間南林間線道路改良事業費は論外としても、事業のスクラップ化が必要な事業や、逆に事業予算の増額が必要な事業などが多々ありますが、概ね妥当なものとして2024年度一般会計当初予算に賛成するものであります。

 

3つの指摘事項

 

1)行政評価システムの廃止について

 

その上で、予算執行上の課題について何点か、指摘しておきたいと思います。まずは、行政評価システムの廃止についてであります。本市では、これまで総合計画の進捗管理は、財政推計のもとでの実施計画と事務事業評価をベースとする行政評価システムによって行われて来たはずであります。(「来たはず」というのは少なくとも方針として掲げられていたということであります)

 

行政評価は、事務事業評価、施策評価、政策評価の3層により構成され、手法としては、職員による内部評価、有識者等による外部評価、市民アンケートによる市民評価によって運用され、総合計画体系と事業評価及び予算事業が一致し、一体化しており、全国的に見ても比較的早い時期から完成度の高いシステムを構築していたと思われます。

 

ところが、第5次座間市総合計画では、行政評価システムは廃止となり、実施計画と市民、有識者等で構成する「ざま未来プラン懇話会」による進捗管理となることが予算決算常任委員会企画総務分科会の審査において、明らかとなりました。

 

問題は、まず、当局から行政評価システム廃止についての説明がなされていないことであります。曲がりなりにも総合計画の進捗管理のツールとしても、行政改革のツールとしても位置付け、市民にも公表していたわけですから、少なくとも廃止の理由について説明がなされるべきであります。

 

次に、分科会の審査において当局は、「実施計画の中に行政評価を組み入れ一本化した」とのことでありましたが、現行の実施計画では事業の評価内容の記載はなく、「新規拡充事業」「継続事業」「縮小廃止事業」等の事業区分が示されているのみで、どのような評価からそうなったのかという記述はありません。また、実施計画では、これまで4年又は3年間の財政推計に基づいて、事業費の見込みが記載されていたものが、2023年度から一切事業費見込みの記述はなくなりました。

 

こうしたことは、行政運営の透明性及び市民、議会への説明責任という点において、問題があると言わざるを得ません。特に、本市においては、先ほども述べましたように、予算における義務的経費の割合が高く、政策的経費が限られている中、政策的経費の「選択と集中」が求められてきます。とすると、なぜこの施策、事業を選択し、経営資源を集中するのかという説明が不可欠であり、現状の実施計画では、それが果たされているとは思えません。市長及び当局に対して再考を促すものであります。

 

2)包括施設管理業務委託について

 

次に、予算執行上の課題の2点目は、当初予算に計上された包括施設管理業務委託についてであります。本業務委託は、市が保有する公共施設に係る保守点検業務や修繕業務を包括的に委託することにより、業務水準の統一、保守管理の質の向上と職員の事務負担の軽減を図るものと説明されておりますが、特に留意しなければならないのが、地元業者の活用がどこまで担保されるのかという点であろうと思われます。

 

これまで、保守管理や修繕は、市と委託業者との直接契約であったものが、包括施設管理業務を委託する事業者との契約に移行することとなります。本定例会の予算審議及び審査において当局は、受託事業者に対し、市内事業者の活用及び育成について、仕様書等で市内事業者及び準市内事業者を積極的に活用することや、これまで市との契約で市内事業者及び準市内事業者となっている業務については、引き続き再委託するよう配慮を求めることなどを明らかにしております。

 

しかし、地元業者等からすれば、あくまでも「配慮事項」であることから、包括施設管理業務受託事業者の意向次第では、受注機会を喪失してしまうのではないかということを心配されております。よって、包括施設管理受託事業者からの下請け契約においては、地元業者等の公正な受注機会の確保となるような仕組みを、仕様書に盛り込んでいただきたいと思います。

 

3)市立プールの休場について

 

次に、指摘事項の3番目は、市立プールの休場についてであります。すでに廃止された栗原プールに続き、新年度から座間公園プール、広野プール及び相武台プールが休場することになっております。これまで、これらのプールで行われていた小学校の水泳授業は、市内の民間プールで行われることとなり、教育委員会では順次、民間プールを活用した水泳授業へと転換するとのことであります。よって、この転換が進めばさらに他の市立プールも休場となることが見込まれる状況であります。

 

しかし、昨年の栗原プールの廃止の際にも申し上げましたが、2022年度決算における栗原プールを除く10箇所の市立プールの利用人数は、学校授業が10,445人に対し、一般利用は15,510人と学校授業による利用人数を上回っており、その際も指摘しましたが年間利用人数がわずか3000人ばかりのパークゴルフ場よりはるかに活用されております。また、小学校の水泳授業は民間プールを活用することができますが、これらの民間施設は一般開放を行っていないため、夏休み中の子どもたちが利用することはできません。

 

よって、現在の市立プールを今後縮小・廃止とするならば、社会体育施設として屋内プールの整備を急ぐべきであります。本定例会において市長は「社会体育施設としてのプールの在り方について、今後庁内で検討し、公共施設再整備計画の見直しの中でその方向性を示していきたい。」との答弁をされておりますが、早急に方針を定めるとともに対応を求めておくものであります。

 

以上、3点の指摘事項を申し述べた上で、2024年度一般会計当初予算に賛成をするものであります。

 

国民健康保険事業特別会計及び国民健康保険税条例の改正について

 

次に、議案第11号の国民健康保険事業特別会計予算及び議案第20号の国民健康保険税条例の一部を改正する条例について、反対の討論を行います。

 

国民健康保険事業は、2018年度から都道府県が財政運営の責任主体となり、統一的な運営方針を定め、市町村が行う事務の標準化がすすめられてきました。神奈川県では、2036年度(R18年度)を保険料水準完全統一の目標とし、2027年度(R9年度)には納付金ベースでの統一、2033年度(R15年度)には県が保険料を決定する準統一とする方針を示しております。

 

本市では、こうした県の運営方針を受け、2022年度の国民健康保税の改定において、2024年度には県が示す標準料率と同額まで引き上げるとしておりましたが、県において激変緩和措置と財政支援措置が取られることとなったため、今回の税率及び税額の改定においては、県が示す標準料率のとの差が1/2となる内容とした、としております。

 

今回、県が示す標準料率までの引き上げを行わなかったことについては、一定の評価をするものではありますが、今回の改定によりどのくらいの負担増となるか具体的に、モデルケースで見て参ります。

 

負担増の実態

 

2人世帯で一人が45歳所得300万円、一人が38歳所得40万円の場合の年間保険税額は、現行37万6900円だったものが、改定後は42万6500円、額にして4万9600円、率にして13.2%の増となります。

 

また、10年前と比較すると、同じモデルケースの場合、当時の年間保険税額は28万2200円でしたから、この10年間で額にして14万4300円、率にして51.1%もの増となっております。

 

ちなみに、被用者保険で公務員共済保険加入者である本市職員で同じモデルケース世帯の場合の保険料額は約22万円ですから、これと比べた場合、国民健康保険加入者は同じ所得であっても2倍以上の保険税を負担していることになっているわけであります。

 

所得に対する保険税の負担率及び改定率

 

次に、所得階層毎の所得に対する税額の負担率及び税額改定後の改定率を見て参りますと、医療分、後期分、介護分が発生する4人世帯の場合、所得に対する税額の負担率は、所得60万円の層が22.68%と最も高く、次に所得82万円の層の19.8%となっております。一方、所得1000万円では10.6%、所得2000万円では5.3%と所得1000万円以上は、所得階層が上がるほど負担率は低下しております。

 

今回の税率・税額改定後の改定率では、所得60万円の層が14.08%で最も高く、次に所得82万円の層の14.05%が続き、所得500万円の層までは13%台となっている一方で、所得900万円以上の層は1.92%と、今回保険税上限額のアップ分しか現行保険税額は増えておりません。

 

総じて、所得が低いほど所得に対する保険税額の割合が高く、今回の改定率も高くなっております。これは、国民健康保険制度の構造的問題であり、所得に関係なく賦課される均等割や平等割などの応益分と所得に応じて賦課される所得割の応能分が、おおよそ50対50に設定されていることから、応益分が所得の少ない層にとって、所得に対する保険税額の割合を押し上げている要因となっており、かつ、保険税の上限が106万円に設定されていることにより、所得1000万円以上の層は所得割6.8%が実際上軽減され、累進が機能していないためであります。

 

被保険者の負担能力を超えている

 

現行の国民健康保険制度は、明らかにこうした構造的な問題を抱え、これらの問題の抜本的な解決なくして、標準料率への統一や県内統一保険料に突き進むならば、明らかに被保険者の負担能力を超えることになり、適正かつ公正な制度とは言い難いものとなります。

 

以上のことから2024年度の国民健康保険事業特別会計及び国民健康保険税条例の一部を改正する条例に反対するとともに、市長並びに当局においては、医療給付費等総額の50%を国庫負担とすることや、保険料上限額を150万円まで引き上げること等、抜本的な改革を国に対し求めるよう、申し述べておくものであります。

 

介護保険事業特別会計及び介護保険条例の改正について

 

次に、議案第12号の2024年度の介護保険事業特別会計予算及び議案27号の座間市介護保険条例の一部を改正する条例に反対の討論を行います。

 

今回、2024年度から2026年度までの第9期介護保険事業計画に基づいて保険料及び所得段階区分の改定が行われました。基準額である第5段階の年間保険料は現行6万6000円から7万300円と、額にして4300円、率にして6.5%の増となっております。所得段階区分はこれまでの16段階から20段階とし、所得1000万円以上の段階区分を4段階設定することにより、累進性を多少なりとも強化したことについては、一定の評価をするものであります。

 

しかし、所得に応じた保険料の公正な累進が確保されているかと言えば、そうではありません。今回の20段階の所得段階区分では、住民税課税対象者となる第6段階から第20段階までの基準額(第5段階)に対する倍率は、第6段階が1.2倍、第7段階が1.3倍と0.1ポイント、倍率が加算され、第8段階から第12段階までは第8段階が1.5倍、第9段階が1.7倍、第10段階が1.9倍、第11段階が2.1倍、第12段階が2.3倍と0.2ポイント倍率が加算されておりますが、第13段階から第20段階までは、なぜか0.1ポイントの倍率加算に留まっております。0.2ポイントづつ倍率加算された段階の所得階層は、所得210万円~700万円未満の階層であり、一方、0.1ポイントづつの倍率加算に抑えられている所得階層は、所得700万円以上の全ての階層であります。

 

このことから何が言えるかと言えば、所得700万円未満の中間所得階層の段階区分では0.2ポイントづつ倍率がアップしているにもかかわらず、所得700万円以上の高額所得階層の段階区分では0.1ポイントづつに累進が緩和されているということであります。

 

こで、試算をしてみました。設定条件は、今回当局が提案している20段階の区分で、第12段階までは当局提案と同じ0.2ポイントの倍率加算とし、第13段階から第15段階までは当局提案では0.1ポイントの倍率加算としているものを第12段階までと同様に0.2ポイント倍率加算とし、所得1000万円以上となる第16段階から第20段階までは0.3ポイントの倍率加算としました。この場合、第20段階所得1400万円以上の年間保険料は30万9320円となり、基準額の4.4倍となります。

 

これでも年間所得1400万円の人では所得に対する負担率はわずか2.2%程度で公正な応能負担とは言い難いものではありますが、この場合の年間保険料の増収分は、総額約8800万円程度となりますので、その分で低所得者層や中所得者層の保険料を減額することは可能となるわけであります。

 

このように、現行制度の範囲内においても保険料の段階設定及び累進性の強化を通じて低所得者層及び中所得者層の保険料負担を軽減することは可能であります、よって、今回の保険料改定にあたって、市として可能かつ必要な措置を講じていないものとして、介護保険事業特別会計及び座間市介護保険条例の一部を改正する条例に反対をするものであります。

 

その他の特別会計、公営企業会計について

 

次に、その他の特別会計及び公営企業会計についてでありますが、議案第14号の水道事業会計予算に賛成し、議案第13号後期高齢者医療保険事業特別会計及び議案第15号公共下水道会計事業会計予算に反対するものであります。理由については、これまでも述べておりますので、ここでは割愛致しますが、一点だけ申し上げておきたいと思います。それは、2023年4月に公営企業運営審議会から水道料金と下水道使用料の据え置きの答申を受け、これに基づき料金改定等を見送ったことについては、しっかりと評価をしたいと思いますので、改めて申し上げておくものであります。

 

条例改正の議案について

 

次に、条例改正に係る議案についてですが、議案第16号座間市議会議員及び座間市長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例の一部を改正する条例、議案第18号座間市職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例、議案第19号座間市市税条例の一部を改正する条例、議案第21号座間市手数料条例の一部を改正する条例、議案第22号座間市国民健康保険条例の一部を改正する条例、議案第23号座間市都市公園条例の一部を改正する条例については、概ね妥当な措置であると認め、賛成をするものでありますが、議案第17号座間市行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用及び特定個人情報の提供に関する条例の一部を改正する条例については、反対をするものであります。

 

以下、理由を申し上げます。本条例改正は、マイナンバー法の改正に伴い改正をするものでありますが、法改正においては、これまでマイナンバーの活用については「法定事務」として、税・社会保障・災害対策のみに限定されていたものが、「特定個人番号利用事務」とされ、国会の議決なしに、その利用範囲を拡大することが可能となってしまいました。マイナンバーの利用範囲については、国会の議決による法定事務として厳格かつ民主的に取り扱うべきであり、そうした観点から条例改正に反対をするものであります。

 

訴えの提起について

 

次に、議案24号訴えの提起についてでありますが、本件は、本市の公用施設たるふれあい会館内食堂を運営していた事業者に対し、契約に基づく使用料及び光熱水費の未払い分等合計518万3532円の支払いを求め、提訴することについてであります。まず、結論的に申し上げれば、契約の不履行に対し、未払い分の請求のため提訴することについては、適切な対応であると認め、賛成をするものであります。

 

しかしながら、現在のふれあい会館内食堂の契約条件は、使用料は無料、光熱水費は調理場のみとしております。これは、以前の契約内容では事業スキームとして成立し得ないという判断からではないでしょうか。つまり、今回の訴えの対象となる事業者との契約内容自体に無理があったのではないか、と思う次第であります。もちろん、当該事業者は契約内容を認め、契約が成立している以上、その履行が求められるのは当然ではありますが、そうした事情も考慮すべきと考えますので、今後の裁判がどのように推移するかわかりませんが、裁判の経過次第では、そうした事情を考慮した和解が成立することを望むものであります。

 

次に、議案第25号市道の路線の認定については、妥当な措置であると認め賛成をするものであります。

 

陳情3件に賛成、2件に反対

 

次に、只今議題となっております陳情についてでありますが、陳情第75号「国に私学助成の拡充を求める意見書の提出を求める陳情」、陳情第76号「神奈川県に私学助成の拡充を求める陳情」、陳情第78号「加齢性難聴者の補聴器購入に市独自の助成を求める陳情」については、陳情趣旨に賛同し、採択すべきものとして、賛成をするものであります。

 

 

陳情第77号「年金制度における外国人への脱退一時金の是正を求める意見書の提出を求める陳情」、陳情第79号「別居・離婚後の良好な親子関係が守られる家族法制改正を求める意見書の提出を求める陳情」については、採択すべきものではないと考え、反対をするものであります。

 

以下、理由を申し上げます。まず、陳情第77号「年金制度における外国人への脱退一時金の是正を求める意見書の提出を求める陳情」についてでありますが、陳情の趣旨が全く持って意味不明であります。陳情書では「国に対し次の事項の調査及び改善を求める意見書を提出するよう」として、「脱退一時金の運用において、日本人と外国人の被用者間で退職時の不公平が生じていること」をあげております。

 

ここであげられている「脱退一時金」とは、日本国籍を有しない方が公的年金制度の被保険者資格を喪失し、日本国内に住所を有しなくなった場合、本人からの請求に基づき被保険者であった期間に応じた額を一時金として支給する制度であります。この制度は、外国人労働者であっても社会保険の加入条件を満たす場合には、強制加入となりますので、老齢年金支給対象となる10年以上の年金保険料納付済み期間の前に帰国する場合は、保険料がいわば「掛け捨て」となるため、支払った年金保険料の一部を一時金として支給し、「掛け捨て」を防ぐことを目的としており、極めて適切な制度運用であると考えます。

 

しかしながら陳情者は、「日本人と外国人の被用者間で退職時の不公平が生じている」と主張しておりますが、日本国籍を有する者の場合は、退職して非被用者となろうが、引き続き被用者となろうが、国民年金又は厚生年金への加入義務が生じるわけですから、制度上の不公平は存在しておりません。

 

次に、陳情書では「生活保護予備軍を無尽蔵に生み出す制度運用であり」と記されておりますが、なぜそうなのかという説明はなく、これもまた意味不明であります。 

 

1950年に施行された生活保護法は、生活に困窮する「すべての国民」に対して必要な保護をすると規定し、外国人については、1954年の局長通知で、「生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取り扱いに準じて必要と認める保護を行うこと」とし、保護を実施してきております。また、2014年の最高裁判決でも、「外国人は行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得る」とされており、外国人への生活保護は、生活保護法及び運用基準にしたがって、適法かつ適切な運用が行われるべきものであります。

 

以上のように、全く持って意味不明であり、かつ、いたずらに日本人と外国人との不要な対立を煽るかのような本陳情は、採択すべきでなく、反対をするものであります。

 

次に、陳情第79号「別居・離婚後の良好な親子関係が守られる家族法制改正を求める陳情」についてですが、以下、反対の理由を申し述べます。

 

まず、親権に関する私の基本的な考え方を申し上げます。現在、日本は婚姻中は共同親権、離婚後は単独親権制度であることに対して、「単独親権制度では夫婦の別れが親子の別れになってしまっている」というのが共同親権を推進する人々の主張のようでありますが、事実と異なるものと言わざるを得ません。

 

民法766条では「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と定められており、離婚後も父母が協力して子育てが出来るようになっております。

 

よって、共同親権推進論者の言う「夫婦の別れが親子の別れになってしまう」のは単独親権制度だからではなく、つまり、親権の問題ではなく、父母の信頼関係が破綻していることによるものと言え、単独親権制度のもとでも、離婚後も民法766条にのっとって協力し合って子を養育することは可能であり、現行法制上、特段の問題があるとは思えません。

 

以上私の基本的な考え方を述べた上、本陳情の陳情趣旨について問題点を指摘して参ります。

 

まず、「原則共同親権・共同監護の実現」についてであります。「子どもへの重大な虐待が認められる場合」や「父母双方の人格を尊重せず子どもの利益を著しく害する場合」等は、「例外として単独親権を認めること」としておりますが、DV等を的確に除外できるのか、という問題があります。

 

つまりDVは密室で行われる場合が多く表面化しにくく、身体的DV以外の精神的、社会的、性的DV等は、証明のハードルが高く、単独親権か共同親権かを定める際にもDVはなかったものとして共同親権が強制される可能性が高いと言わざるを得ません。

 

よって、仮に共同親権を導入するとすれば、陳情者の主張は逆に、原則単独親権とし、父母双方が共同親権の合意が成立する場合にのみ、共同親権とすべきであると考えます。とはいえ、表面上合意が成立されたとしても、実際には「共同親権にしないと離婚しない」とか「共同親権にしないと養育費は払わない」等と共同親権が取引材料とされる恐れもあり、やはり、現行の単独親権制度の維持が最良と考えるものであります。

 

次に、親子交流の考慮要素の適正化についてでありますが、家庭裁判所における面会交流申し立ての内、2020年度では89.6%が何らかの形で面会交流が実施されております。この中にはDVとして認定されなかったり、子どもが別居親と会いたくない意思を示している場合も含まれており、そうした中で面会を制限されたり認めてもらえないということは、DVなどよほど強い事情があることが推察されるものであります。

 

別居親が信頼関係の破綻している相手、あるいはDV加害者等である場合は、面会交流に向けたやり取りを直接続けなければならないことは同居親にとっては、耐えがたい苦痛・恐怖であり、「親子の関係性」に加えて「父母の関係性」を面会交流の考慮要素として重視することは当然であると考えます。

 

また、陳情人が言うように、主体は子どもであり、面会交流権は「子どもに会いたい親の権利」ではなく、「親に会いたい子どもの権利」だということを指摘しておきたいと思います。

 

次に、裁判所の調停・審判が確実に実施される規律の明文化についてでありますが、面会交流については、現在、家庭裁判所においては、診断書などで客観的に証明できる身体的DV以外はDVとしてなかなか認めて貰えず、または過小評価され、子どもが別居親に会いたくないとしても面会交流が強制されている実態があります。このような状況により、不履行という選択をせざるを得ない同居親・子の存在が推定されますので、面会交流のみならず養育費の支払いや子の引き渡しについても、事例ごとに個別具体的な考慮を経ずにいきなり親権停止、喪失を課すというのは思慮に欠けるものであり、適正ではないと思う次第であります。

 

次に、子どもの連れ去り行為の抑止についてでありますが、「子どもの連れ去り」「実子(じっし)誘拐」というキーワードを共同親権推進論者はしばしば用いております。陳情者は「DVや児童虐待がないのに正当な理由なく子を連れ去って」としておりますが、DV加害者の特徴は加害を認めないことにあり、多くの場合、正しくは「子連れ避難」「子連れ別居」と考えられ、緊急避難措置としては適切な対応だと考えます。

 

また、子どもの権利条約を引き合いに出すことも特徴でありますが、同条約第9条では、「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、その分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合はこの限りでない。」とされており、分離自体を否定しているわけではなく、条約の趣旨に反するものでもありません。

 

以上、本陳情の問題点について指摘して参りましたが、これらの理由から本陳情は採択すべきではなく、反対をするものであります。

 

以上、只今議題となっております議案及び陳情について、賛成並びに反対の討論を行いました。議員の皆さんのご賛同をよびかけ、討論を終わります。