2010年第3回定例会 討論

2010年第3回定例会 討論

 ただ今より、市民連合を代表して、上程されております諸議案について、賛成並びに反対の立場から討論を行います。
 まず、2009年度の水道事業会計決算の認定について、反対の立場から討論を行います。当該年度の本市水道事業の経営成績の特徴は、なんと言っても1997年度以来、12年ぶりに収益的収支全体において、赤字となったことであります。事業収益は、17億9032万3110円。一方事業費用は17億9613万4417円。これにより当年度581万1307円の純損失を計上しております。
 本市の給水事業の採算状況は、宮ヶ瀬ダムの運用が始まった2001年度以降、給水原価が供給単価を上回るといういわゆる「逆ザヤ」現象が続いてきましたが、営業収支の赤字を営業外収支の黒字で補てんする形で、収益的収支全体では、なんとか黒字を確保してきました。当該年度でも、営業収支では、営業損失1億5503万5884円に対し、営業外収支では1億7588万7628円の営業外利益をあげており、経常収支全体では2085万1744円の経常利益を計上しております。しかし、過年度損益修正損2038万2千円、臨時損失617万9千円など特別損失が2669万2千円となり、経常利益を上回ったため、収益的収支全体では純損失を計上する形となったわけであります。要は、営業収支の赤字を営業外収支によって補てんするというここ数年間の損益状況の基本構造は、変わっていないものの、特別損失が前年度の3倍以上に膨れ上がったことにより、「純損失の計上」という状況が作り出されたということであります。
 では、特別損失が3倍以上に膨れ上がった原因は何かといえば、主なものは水道料金の不能欠損処分5558件1918万円となっております。前年度の件数が1812件、金額が439万円ですから、件数にして約3倍、金額にして約4.4倍と極めて顕著な伸びを示したことによるものであります。これは当局の説明によると、当該年度において不能欠損処分の基準を厳しくしたことによるものであるとのことでありますが、ある意味、実に「タイミングの良い」基準の見直しであります。
 「実にタイミングが良い」とはどういうことかと言えば、ご承知のとおり、当局は来年度以降、水道料金値上げを検討し、今年度12月議会には値上げ案を提案するようであります。つまり、水道料金値上げを決定しようとする年の前年度決算のおいて、「純損失」が計上されることについて、「実にタイミングが良い」と感ずるのは、うがった見方でありましょうか。
 過去の本市における水道料金値上げとその当時の損益状況を振り返って見ると、近くは1996年、97年損失発生、1998年から18.5%の値上げ。1993年損失発生、1994年から27.7%の値上げ。1984年、85年、86年損失発生、1987年から21.67%の値上げと、必ず料金値上げの前年度の決算では純損失を計上しております。「純損失を計上したから値上げをする」これは、政策的判断は別にして、企業会計上だけから見れば、ある意味当然のことかもしれません。こうしたことからすると、料金値上げを決定する年の決算において、純損失を計上しないことは、過去の例からすればあってはならないことでしょうし、どうしても赤字決算が不可欠となるというわけです。私が「実にタイミングが良い純損失の計上」と申し上げた理由は、そのような点からであります。
 ご承知のとおり、会計処理基準を変更することによって損益状況が、大きく変わってくることはあり得ることであります。料金値上げを提案しようとする年の決算審査において、不能欠損処理基準を変更し、前年度比で3倍〜4倍の特別損失の計上は理解に苦しむものでありますし、率直に言って「純損失」を演出したのではないかという疑念さえ抱かざるをえないところであります。

 ともあれ、本市の水道事業、特に営業収支の赤字構造の問題は、けっしてこうした技術上の問題に本質があるわけではありません。代表監査委員、議会選出監査委員の両名から提出された決算審査意見書において「受水費の増加が給水事業の収益悪化の大きな要因となっている」と明確に述べられているように、2001年から開始された宮ヶ瀬系県水受水費の負担が本市水道事業の赤字構造の根本的原因であることは明らかであります。
 2001年宮ヶ瀬ダムの運用開始から当該決算年度である2009年度までの9年間で、県企業庁に支払った受水費の総額は約40億円。その内、実際に本市が使った水の料金は、約13億8000万円。残りの約26億2000万円は、一滴の水も使っていないにもかかわらず、県企業庁へ支払っているわけであります。もし、この使ってもいない水の料金26億2000万円がなかったならば、2001年度以降全ての年度において、営業収支が赤字決算となることはなく、内部留保資金も含めて、極めて健全な水道事業運営を行うことができたはずであります。
 星野前市長、遠藤現市長並びに市当局は、本市水道事業会計の赤字の原因となっている宮ヶ瀬系県水受水費の支払いの根拠を、1978年10月12日に締結された神奈川県企業庁座間市長との「宮ヶ瀬ダム計画に係る座間市の配分水量の取り扱いに関する基本協定書」によるものとしてきました。
 しかし、この基本協定に基づく受水費支払いの妥当性、基本協定そのものの有効性に関する疑義は、今回の決算審査における質疑等を経た後も、解消されるどころか、益々深まるばかりであります。
 まず、基本協定の有効性について述べて参ります。
 この基本協定書が締結されたのは、1978年10月12日となっております。県議会において宮ヶ瀬ダム基本計画が議決された翌日に、締結されておりますが、締結にあたって当時の本多市長並びに当局は、この事実を議会にも市民にも明らかにしておりません。さらに、これまで市当局は、この基本協定を議会に報告したのは協定締結から2年後、すなわち1980年10月17日、全員協議会において神奈川県東部地域広域的水道整備計画への同意報告をおこなった時である」としておりました。しかし、昨年来我々が指摘しているように、当時の市議会会議録を見る限り基本協定の存在は報告されておらず、配分水量並びに受水費についても「使った水の分だけ料金を支払う」と現在とは全く違う解釈をされております。今定例会の総括質疑の際も、「基本協定は一体いつ市議会へ正式に報告されたのか」という私の質疑に対し、上下水道部長は「わからない」という答弁をされており、未だに、この基本協定がいつ議会や市民の前に明らかにされたのか、不明なままの状態であります。
 さらに、今回我々が明らかにしたのは、宮ヶ瀬系県水受水問題と密接に関係する神奈川県東部地域広域的水道整備計画策定に伴う手続きの妥当性の問題であります。水道法第5条の2第2項では「関係地方公共団体と協議し、かつ当該都道府県の議会の同意を得て、広域的水道整備計画を定めるものとする」と規定しております。さらにこの条文の運用にあたって、「水道法の一部改正に伴う広域的水道計画等の策定について」と題する通知が、1978年1月18日に当時の厚生省から出されております。この通知の「計画策定の手続き等に関する事項」では、都道府県知事の計画策定にあたって「特に次の点に留意されたい」として、関係地方公共団体との協議について「なお関係地方公共団体の協議に対する意思を明らかにするため、当該地方公共団体の議会の同意をも得ることとするよう指導すること」と書かれております。
 しかしながら、本市議会において神奈川県東部地域広域的水道整備計画の策定並びにその改訂にあたって、その同意が諮られたことはありません。東部計画の本議会への報告は1980年10月ですから、この通知はその2年以上前に出されているにもかかわらず、当時の神奈川県知事も座間市長もこの通知を無視していたということになります。
 ではなぜこうした通知、すなわち広域水道計画の策定において関係地方公共団体の「議会の同意」を求めているかと言えば、地方公共団体の財政上の問題として、将来にわたる大きな負担を伴うことになるからであります。
 現に本市は、宮ヶ瀬系県水の受水費負担によって、水道会計は赤字に追い込まれております。星野前市長はこの受水費について一貫して「宮ヶ瀬ダム建設は多額の投資がされており、本市としても応分の負担をしていかなければならない」という応分の負担論を展開しておりました。さらに遠藤現市長も基本的にこの見解を踏襲されております。この論理からすれば、基本協定で定められた「配分水量」というのは、単なる「水の量」を定めたものではないということです。すなわち、宮ヶ瀬ダムの利水者であり、かつ事業主体である神奈川県広域水道企業団の構成団体の県企業庁と、構成団体ではない本市との間で、実質的にはダム建設費や浄水場など付帯施設建設費の負担割合を約束した概念であるということになります。しかも、基本協定締結時には、ダム建設事業並びに利水事業全体の事業費の総額はもちろん確定しておらず、受水費単価も決まっておりません。
 星野前市長、遠藤現市長が取ってきた立場からするならば、座間市は水道管理者である市長の一存によって、将来にわたって「日量130万トン分の3万7300トンという割合で、ダム建設費などの費用負担を、負担金額の全貌すらわからない段階で請け負ったことになります。水道管理者である市長が、「責任水量」ですらない「配分水量」を合意すれば、議会の議決すら一切必要とせず、未来永劫、必要としない水の費用を払い続け、今決算でも明らかにように本市の水道事業を赤字に追いやり、さらにそれを理由に大幅な水道料金値上げによって市民にその負担を転嫁することは、住民自治を基礎におく地方自治の原則からしても、全く持って不合理極まりないものとしか言いようがありません。
 遠藤市長は、本定例会における我々の質疑に対し、「この問題についての歴史的な経過の重さを感じている。議論の経過を改めて整理しなければならない」と答弁されましたが、しっかりと我々の指摘を受け止め、基本協定締結に関する事実経過並びに基本協定の効力の及ぶ範囲について、速やかに検証を行うよう求めるものであります。

 さらに、今回我々は、県企業庁との基本協定並びに分水契約の契約上の性格について質しました。この契約は、私法上の契約なのか、公法上の契約なのか、という私の質疑に対して、上下水道部長は「私法上の契約である」と答弁されております。我々もそういう認識であります。基本協定と分水契約が私法上の契約であるならば、当然「契約自由」の原則が適用され、両者の対等な意思の合致により、契約が締結されるべきであり、必要であれば協議により見直しを求めるのは、当然であります。早急に、県企業庁との基本協定並びに分水契約について、見直しの協議を始めるよう求めるものであります。

 次に水道事業会計決算認定の反対討論の最後に、水道料金値上げについて、言及しておきたいと思います。料金値上げについては、現段階では、当局案が正式に提示されているわけではありませんので、その是非については、改めて論じたいと思いますが、ここでは料金値上げ提案に至るプロセスについて、指摘しておきたいと思います。
 今回の水道事業決算にあたって、代表監査委員並びに議会選出監査委員は、監査意見書の末尾において「多くの市民の意見を聞くことで水道利用者に理解が得られる料金改定となることを要望する」と極めて妥当な意見を述べられております。しかしながら、今回の決算審査において明らかになった問題は、市長並びに当局は、この監査委員の意見を「重く受け止める」とは言うものの、実際にはこれを無視しようとしていることであります。
 水道料金の値上げは、市民の負担を強いることになり、市民生活に大きな影響を与える重要な問題であることは間違いありません。であるならば、行政の意思形成過程において、最大限多くの市民の意見を聴取することは、協働まちづくりを進めようとする本市にとって基本中の基本ではありませんか。「なんのための協働まちづくりか」といわざるを得ません。再度、市長並びに当局に対し、協働まちづくり条例に基づいて、審議会手続きのみならず、市民説明会手続、意見公募手続による市民意見の聴取を行うよう、強く求めておくものであります。
 さらに指摘しておくならば、市民意見を聴取する上で、最低限必要なことは、正確な情報提供であります。今定例会の会期中に、座間市ホームページに「水道料金改定の検討状況」というページがアップされました。それには、座間市の水道料金は1998年以降据え置かれてきたことや、2001年度以降、給水原価が供給単価を上回る状況が続いていることが記述されておりますが、ではなぜ赤字に陥ったのか、その原因は何かということは全く触れられておりません。今回の監査委員による決算意見書にあるように、赤字の原因が宮ヶ瀬系県水の受水費にあることをしっかりと示し、その是非を市民に問うべきであります。でなければ、赤字の原因を覆い隠した料金値上げというそしりを受けることになるでしょう。この点を含め、改めて正確な情報提供を市民に行うよう求めておくものであります。

 次に、一般会計補正予算について、修正案に賛成し、原案に反対する立場から討論を進めて参ります。
 今補正予算に計上されております「住民票等コンビニ交付事業費」について、我々は現時点においては、事業の執行を中止すべきであると考えるものであります。
 その理由の第一は、事業に係る費用対効果の問題であります。今回の事業提案にあたって当局は、次のような事業の意義を説明されました。
1)座間市の生産人口の半分以上が市外通勤、通学者であり、そうした人々にとっては、コンビニ交付は利便性が高まること。2)今やらないと財団法人地方情報センターの助成金が続くかどうかわからない。今回同センターの公募に応募したのは、助成金がもらえることが第一の動機であること。3)確かに一件あたりの発行経費は高くなるが、将来利用者が増えれば負担は少なくなる。今回の初期経費は先行投資であること。4)県に問い合わせたところ、今回の初期経費6875万8千円から助成金額1300万円を引いた残りの市単独負担分5575万8千円のうち、半分は特別地方交付税の算定に参入され、実質的には半分の2700万円強の負担で済むこと。

 大体以上のようなものでありました。我々も、「市民の利便性の向上」という点について、一般論としては否定するものではありません。しかし問題は、その「利便性」が市が負担する経費との関係で、見合うものであるかどうかという点であります。当局が教育市民常任委員会に提出した資料でも、初年度住民票・印鑑証明発行見込み1000件では、1件あたりの経費は5920円になっておりますし、現在の自動交付機の1件あたりの経費517.5円を下回るためには年間15000件以上のコンビニ交付件数とならなければなりません。
 確かに、コンビニ交付件数が増えれば1件あたりの交付経費は下降することになりますが、実は経費負担はこれだけではありません。隠れた経費負担となるのが、住基カードの発行経費であります。今回の補正予算原案では、初年度住基カード6000枚分1071万円が含まれており、一枚あたりの単価は1785円となりますが、これは当局が試算した1枚あたりの発行経費には含まれておりません。この住基カードの発行経費は、今まで1枚あたり500円の発行手数料を市民から徴収しておりましたが、一定期間(2011年度中)は無料化するわけですから、全て税金で市が負担することになります。
 今まで1枚500円の発行手数料を徴収してきた7年間の累計発行枚数は2009年度までで4777枚となっております。たしかにこれが無料化されると飛躍的に発行枚数が増えることは、他の自治体の例からしても明らかではあります。海老名市の場合、2003年から2007年9月までの有料期間の発行枚数はわずか1888枚。これが2007年10月から2009年3月までの無料期間中は、15065枚まで増えましたが、有料化に戻った2009年4月から2010年3月までは、1587枚と急激に落ち込んでおります。
 このことからも、いかに無料化の威力が大きいこと。逆に言えば、無料化をしなければ住基カードの発行枚数は増えないということが明らかであります。コンビニ交付件数を増やそうとすれば、住基カードの発行枚数を増やさなければなりません。海老名市の無料化は国の補助金を使っての実施ですが、座間市の場合は、全額座間市一般財源を使っての持ち出しとなります。結局、コンビニ交付を増やそうとすれば住基カードの無料化を継続するしかなく、その経費がかさんでいくというジレンマに陥ってしまうことになるわけです。
 山より大きなイノシシは出ないと言われます。当たり前のことですが、コンビニ交付件数より住基カード発行枚数が大きく上回ることが前提となります。現在自動交付機による発行枚数と磁気カード、住基カード保有者の割合は約1対2。座間市が目標としているコンビニ発行枚数23000件を達成するためには、最低46000枚以上の住基カードが普及しなければならないことになるわけです。しかし、そのための発行経費はなんと8211万円にものぼり、当局が提示した1枚あたりの発行経費はさらに増えることになるわけであります。
 こうした経費負担の増大は、市民の利便性に見合うものでしょうか。市長並びに当局に対しては再考を促すと共に、今回議決する議員の皆様におかれましては、厳しい財政状況の中、ほんとうに必要な経費負担なのかどうか、真剣にお考えいただき、修正案にご賛同いただきますよう、改めて訴えるものであります、

 次に、その他の議案についてでありますが、議案第48号、49号、50号、51号の各特別会計補正予算と議案第52号から第60号までの各議案については、概ね妥当なものとして賛成をするものであります。

 次に、上程されております陳情について討論を行います。まず陳情第35号「重度障害者医療費助成制度に関する陳情」については、陳情の趣旨、理由共に極めて妥当なものとして賛成をするものであります。当局におかれましては、速やかに陳情の趣旨に沿い、制度改革を進めるよう求めておくものであります。

 次に、陳情第36号「座間市に新たな総合グランド施設(総合運動公園)の整備を要望する陳情」については、反対をするものであります。この問題に関する我々の基本的立場を申し上げますと、さきほどのコンビニ交付事業と同様に、一般論としては総合運動公園の整備について、一概に否定するものではありません。しかし、問題は費用対効果、さらに本市の財政的能力からして、可能かどうかということであります。
 具体的な他市の事例を見てみるならば、2007年4月から供用開始となりましたお隣相模原市麻溝公園競技場の場合、総事業費は約181億円(見込み)。その内訳は施設整備費が約59億円(見込み)、用地購入費が約112億円(実績)となっております。このような莫大な建設コスト、さらに毎年の維持コストを考えれば、本市の財政能力からして、不可能であることは明らかであります。現在、議会審議が進められようとしている第4次座間市総合計画の当局案の中でも、施策の方向として「総合運動施設の調査研究に努めます」とありますが、我々は妥当な選択だと考える次第です。今後10年間の本市におけるインフラ整備の優先順位からすれば、喫緊の課題となっている老朽化施設の建替え、すなわち消防本部や公立保育園、また第4次総合計画の基本コンセプトとなっている協働まちづくりを推進するための施設整備としての、コミュニティセンター、市民活動センターの整備。安心して歩くことができるバリアフリーの歩行空間整備とそのネットワーク化、さらに学校、福祉施設など既存施設の長寿命化が求められているところであります。こうした優先度の高い事業の財源見通しでさえ、困難を極める中で、総合運動施設の具体化は、全く持って現実的とは言えませんし、もし強行することになれば、本市財政の破綻へと導くことになりかねません。よって、我々は本陳情について、反対をするものであります。

 次に陳情第38号「保育制度改革に関する意見書提出を求める陳情」について、反対の立場から討論を行います。
 この陳情は、現在政府において検討が進められている「子ども・子育て新システム」について、子育てに関する権限と財源が基礎自治体に移譲された場合、保育水準や保育の質の低下、地域格差が生じることを懸念し、児童福祉法第24条に基づく保育の公的責任を堅持し、現行保育制度に基づく保育施策の堅持を国に求める意見書を提出することを求めたものと理解されます。
 我々も、陳情文の中で触れられている保育の「市場化」については、子育て、保育の分野においては、介護分野と同様に市場として成立する可能性がないこと。よって公的支出を拡大することにより、サービスを提供し、それが結果として経済活動を活発化させ、税収等の財政の強化につながるという立場から、反対をするものでありますが、地方自治地域主権の観点では、陳情者と立場が異なるものであります。
 陳情者は、基礎自治体へ子育て・保育に関する権限が移譲された場合、「財源の確保も十分でないことから、負担増によって利用したくても利用できない家庭や保育水準や保育の質の低下、地域格差が生じる」としていますが、これはそれこそ「主権者の自己決定」や「住民自治の原則」をないがしろにした議論だといえます。中央政府で決まることは正しく、地方自治体が決めることは間違いだということでしょうか。これまで、中央政府が決定し、分配だけを行うことによって、利権構造が生まれ、巨大な財政赤字が累積され、今や中央政府による財政の調整さえ機能不全に陥っているではありませんか。一方地方自治体では、制度上の原因があるとは言え、中央政府からの補助金をいかに獲得するかが、財政運営の要諦のごとき語られ、自律的な政策展開を放棄しているかのような状態であります。
 現在、政府で検討されている子ども・子育て新システムが、十分な財源と権限を地方自治体に委ねるものであるかどうか、厳しく見極めていく必要はありますが、「現行制度を維持し、その拡充」、すなわち中央政府が財源と権限をこのまま維持することには反対であり、本陳情については反対するものであります。

 次に、陳情第39号「安心・安全な国民生活実現のため、国土交通省の地方出先機関の存続を求める陳情」に反対の立場から討論を行います。
 本陳情は、陳情項目として4項目が列記されておりますが、いずれも本市の権限を越えるものであり、陳情としての要件を満たしていないものと思われますが、地方自治法第99条に基づく意見書の提出を求めたものと理解をしておきたいと思います。
 4項目のうち、1.の地域主権改革、道州制導入について、国民への情報提供と十分な議論。2の財源、国民負担、負担割合などを明確にすること。4の行政の民主化への転換については、我々も異論はありません。しかし、本陳情の最大の眼目であろう3の国土交通省の地方出先機関の廃止を行わないことについては、我々は反対であります。
 陳情者の所属する国土交通省の地方整備局は、予算約8兆円、職員数2万2千人と国の出先機関としては最大の組織であります。しかも、実態的には大臣や国会のコントロールの外にあり、所在地の首長や議会の権限も及ばす、さらに地域住民の目も届きにくいため、組織に対する監視やガバナンスが欠如していると言わざるを得ない状況であります。
 この問題も、地方主権改革の試金石とも言われる問題でありますが、我々は、真に中央政府としての地方活動に必要不可欠なもの以外は、原則廃止すべきであるという立場から、本陳情に反対するものであります。

以上で、上程されております諸議案について市民連合を代表しての討論を終わります。