第4次座間市総合計画基本構想 修正案への賛成討論

それではただ今より、議題となっております議案61号「第4次座間市総合計画基本構想について」、提出されております二つの修正案に賛成の立場から、討論を行います。我々の修正案については、すでに提案理由の説明が行われておりますが、改めて、我々がなぜ修正を求めているのかという点を中心にして討論を行って参ります。

 結論的に申し上げれば、提出されております二つの修正案、特に我々が提出した修正部分を除けば、基本的には原案に賛成であります。しかし、逆に言えば、我々が提出した修正案の中には、決して看過することのできない根本的な問題が含まれております。
 まずは、その点について明らかにして参ります。問題の一つ目は、総論部分に示されております「土地利用方針」についてであります。原案では、「土地利用の基本理念」について、「都市的土地利用と自然的土地利用とのバランスを維持しつつ、景観の保全や形成に努め、各種産業の活性化を図り、市民が住み続けたい『住宅都市』としての環境を保全、整備していくことを土地利用の基本」と定めております。この基本理念については、我々も概ね妥当なものだと思っております。特に「住宅都市」としての位置づけや現状の都市的土地利用と自然的土地利用のバランスを維持することを明確にし、第3次総合計画にちりばめられていたバブル的開発指向を排除したことついては、適切な選択であると思っておりますし、大いに評価するものであります。
 しかし、この基本理念に基づく土地利用方針の2番目には「市民生活の利便性向上と市域の発展、防災や災害時の都市機能を確保できる本市の骨格として、道路の南北軸及び東西軸の整備を目指します」と記述されております。さらにこの点は、各論部分の「施策35道路」のところで、東西軸に対応するものと考えられる「座間都市計画道路3・4・5号座間南林間線の早期着工」が、南北軸に対応するものと考えられる「座間都市計画道路3・4・3号相模原二ツ塚線の早期完成」さらに「座間都市計画道路3・3・2号広野大塚線の早期着工」を、いずれも県への要望として明記されております。
 総合計画の基本構想に、具体的な路線名を明記して、整備を要望するというのは、極めて異例なことだと考えるものでありますが、この3路線の内、相模原二ツ塚線については、我々も整備の必要性については認めるものであります。しかし、座間南林間線と広野大塚線については、座間市のまちづくり、特に先ほど触れました本計画の土地利用の基本理念からすれば、その趣旨に反するものであると考えるものであります。
 具体的に言えば、座間南林間線の未完成区域は、県道相模原・茅ヶ崎線(通称:座間大通り)から市役所前の市道17号線まででありますが、県道相模原・茅ヶ崎線から県道町田・厚木線(通称:相武台バイパス)までの区間には、本市が街並み環境事業として整備し、特定景観地区に指定をしております鈴鹿・長宿地区があります。座間南林間線の計画ルートは、この特定景観地区を完全に分断することになるわけであります。これまで鈴鹿・長宿街並み環境事業に投入した事業費の総額は、約2億8600万円。これだけ多額の事業費を投入して、街並み環境整備事業を行い、さらに景観条例の制定に合わせて特定景観地区に指定し、景観保全に努めながら、一方でそのど真ん中を都市計画道路で分断するというのは、行政施策としては理解に苦しむものがありますし、「景観保全や形成に努める」とした本計画の土地利用の基本理念にも反するものであると考えるものであります。
 都市計画道路広野・大塚線については、すでに何度か指摘してきたことでありますが、座間市の中央部、中丸地区の土地利用方針と密接に関係する問題であります。現在、本計画と合わせて座間市都市マスタープランの改訂作業が進められておりますが、その素案では、この地域は、今回、「利用調整ゾーン」に位置づけられ、土地利用方針は示されず、改定前のプランと同様に方針を検討する地域ということになっております。ご承知のとおり、この地域はこれまでの都市マスタープランにおけるゾーニングでは、農業と住宅地との共存を図る「農住共存地」及び「土地利用検討区域」とされてきました。しかし、実態上は、工業団地、墓地、産業廃棄物中間施設など、明らかにゾーニングとはかけ離れた土地利用が行われてきました。
 本来なら、この地域は農振・農業地域が中心を占めるわけですから、その他の市街化調整区域と同様に「農地や集落地、緑地などで構成される良好な環境を保全する田園・自然環境ゾーン」として位置づけられるべきところありますが、現状の不適切な利用実態を追認するかのような「利用調整ゾーン」としてのゾーニングや、この地域の農地部分を分断する都市計画道路広野・大塚線の着工要望には、我々は同意することはできません。
 しかも、この計画路線は、綾瀬市都市計画道路寺尾・上土棚線とつながる道路として、県道としての整備を県に要望するというものでありますが、県の「みちづくり計画」における位置づけは、綾瀬市寺尾台から東原までが「事業化検討箇所」となっているに過ぎません。この区間でさえ、先日テレビ報道がされておりましたが、ルートが小学校や緑地を分断することや、地元住民の反対運動など事業着手は容易ではありません。ましてや東原以北の座間市部分、すなわち広野大塚線については、この10年間では全く着工のメドすらたたないことは、自明のことであります。にもかかわらず、この全くメドのたたない県道整備について、路線名を明記して基本構想に記述することは、妥当性に欠けるといわざるを得ません。
 そこで、我々の修正案へのご賛同を求めるものでありますが、我々の修正案では、具体的な路線名を削除した上で、「道路ネットワークの骨格となる都市計画道路の整備を県とともに進めます」という原案の文言は残しております。座間南林間線、広野大塚線については、時間的な余裕が十分あるわけですから、今後さらに本市の土地利用について全市民的な議論を深め、最終的な判断は次期総合計画において、位置づけようとするものであります。これならば、立場を超えて一致できるものと考えますので、皆様のご賛同をお願いする次第であります。

 次に、本計画において我々が看過できない問題の2点目は、各論の第2章「政策・施策」に示されております基本構想の政策・施策体系であります。すでに、原案に対する質疑や上程されております行政組織条例の改正案に対するの質疑において指摘しておりますが、問題は、介護保険と高齢者福祉を政策の面でも、組織の面でも分離させたことであります。結局当局からは、このことについての積極的な意義は、残念ながら説明をされておりません。確かに介護保険法の施行以降、市町村の事務は、介護保険法に基づく事務と、老人福祉法に基づく事務、さらに市独自の事務事業に区分されることになりましたが、これらの事務が密接に連関し、政策・施策展開として分かちがたいことは、当局自身が、あるいは現場の福祉担当職員の方々が十分承知されていることではないのでしょうか。
 当局からは、「巨大となった保健福祉部の組織を分割するにあたって、福祉事務所の所掌事務とそれ以外に分けた」という理由しか示されておりませんが、結局のところ、組織の論理から政策体系の分類を決めるという逆転した発想としか言いようがありません。政策・施策と組織を一体化するという本計画の基本コンセプトは、どこへ行ってしまったのでしょうか、我々はこの基本コンセプトについては高く評価していただけに残念でなりません。
 我々の修正案では、介護保険を政策2「支えあい思いやりに満ちたやすらぎのまち」の所へ位置づけ、地域・高齢者福祉と同一の政策分類とすることとしております。提案されております本計画の戦略プロジェクト案の中にも、「高齢者地域見守りネットワーク」が示されておりますが、高齢者の社会的な孤立化を防ぎ、必要な介護サービスへと結び付けて行く施策展開は、今後益々重要となっていくことだと思いますので、議員の皆様の賢明なるご判断をお願いする次第であります。

 次に、問題の3点目は、本計画の基本コンセプトと言っても過言ではない、市民と行政との「協働」についてであります。原案では、総論部分の第4章「まちづくりの基本的役割分担」において、協働に関する市の考え方が示されておりますが、明らかな認識の混乱が見られます。
 それは我々の修正案における削除部分にあたりますが、原案では「「協働まちづくり条例」及び「協働まちづくり推進指針」に基づき、市民と行政が手を携えてまちづくりを進めていくことを目指した「協働」への取組みについての考え方を示します」とありますが、本市の協働まちづくり条例は、名称は「協働まちづくり」を掲げておりますが、条例の内容は、「市の行政運営における市民参加の基本的事項」を定めたもの、つまり「行政の政策決定過程における市民参加」手続きを定めたものであり、「市民と行政との協働事業のあり方」を定めたものではありません。「市民参加」手続きと協働事業の違いについては、すでに指摘してきたところでありますが、10年間の計画期間を持つ総合計画において、さらに計画の基本コンセプトにあたる部分での、明らかな誤謬は、看過しえるものではありません。よって、この部分を削除することによって、無用な混乱を避けることが必要であると考えるものであります。
 議員の皆様におかれましては、修正の理由をご理解いただき、ご賛同いただければと思いますし、当局においては、この混乱を解消するためにも、市長答弁でもその意思はすでに示されておりますが、速やかに「市民と行政との協働事業」のあり方を定める条例の制定を求めるものであります。

 以上、我々の修正案における修正内容を中心に討論を進めて参りましたが、本計画を議決するにあたって、計画全体に対する評価と市長並びに当局に対する要望を述べておきたいと思います。
 まず、計画全体に対する評価では、細かな部分では我々が今回修正案を提出した部分以外にも、妥当性に欠けると思われるところはありますが、計画全体では、第3次総合計画に比べれば、計画としての完成度は、はるかに高いものだと思っております。
 具体的に申しますと、政策・施策の目標が比較的明確になっており、成果を検証しえること。予算、人事などの資源配分と連動し、実効性があること。さらに多少の齟齬はありますが、計画体系と組織目標が一致していることなどは、評価すべき点だと思っております。
 しかし、政治や経済というのは、ある種「生きた現実との格闘」とでも言うべきものであります。良い意味でも悪い意味でも予想を超える大きな変化は、めずらしくありませんし、ここ数年間の日本と世界の現実は、そのことを実証していると言えるでしょう。最近の事態で言えば、世界同時不況の影響は、中央政府や国内経済にとどまらず、もちろんのこと本市のような小さな基礎自治体の財政や、政策・施策展開にも現に大きな影響を及ぼしております。そして、今後の10年間おいても、地方自治体をめぐる環境は、どの政策分野においても、大きく変化すること見込まれます。
そうした中で、システムとしての計画の完成度は高いとしても、実際の変化に対応できなければ、その意味はありません。特に本計画では、さきほど述べたように、政策・施策・組織の一体化によって、政策分野ごと、組織的に言えば部ごとの、施策評価や事業の優先順位を明確にすることは、容易になったと言えるでしょう。しかし、今後、財政的な要請から、あるいは必要とされる行政需要から、政策の分野での優先順位をつけなければならない事態が、起こりえることも想定しておかなければなりません。
 わかりやすく表現すれば、本計画と現行の行政評価システムでは、例えば、福祉の分野では何を優先するのか、あるいは教育の分野では何を優先するのか、都市整備の分野では何を優先するのかということは、比較的明確にすることが可能でありますが、今後の事態の推移次第では、福祉を優先するのか、教育を優先するのか、それとも都市整備を優先するのかという順位付けが必要となる可能性があるのではないかということであります。現状ではこの政策分野での評価、優先順位を明確にすることはシステム上困難であります。現行の行政評価システムでも、位置づけられているのは施策評価までとなっており、政策評価は、第3次総合計画について外部評価委員より、政策評価が一度行われたにすぎません。今後は、内部評価、外部評価においても、さらに市民評価においても、政策評価が可能となるシステム構築を行い、必要に迫られた場合、政策的優先順位を明確にすることができ、予算や人事などの資源配分を効率的に行えるようすべきであると思います。またこのことは、「必要に迫られた場合」という受身の意味のみならず、基礎自治体の戦略経営という点からも必要なことだと考えますので、市長並びに当局に求めておくものであります。
 最後に、議員の皆様に訴えます。今回の第4次総合計画の策定にあたっては、座間市議会は市長の付属機関である総合計画審議会には参加をせず、議会として特別委員会を設置し、議員全員参加で精力的に事務調査や議案審査を行う中で、様々な意見表明も行ってきました。このことは、首長と議会の2元代表制のもと、独自の権能に基づいて、計画の策定過程に関与してきたわけであります。この後の採決において、どのような議決となるかはわかりませんが、いずれにしても、我々は本計画の策定過程のみならず、今後の市長・当局側の執行過程においても、しっかりと議会としてのチェック機能と政策提言を果たしていかなければならないと思っております。現行の行政評価システムでは、事務事業評価を基礎として、施策評価まで、職員による内部評価、外部評価委員による外部評価、そして、市民アンケートなどを通じた市民評価が行われております。では、議会側はどうするのか、ということが問われていると思います。そこで、我々は提案するものでありますが、議会として本計画の進行状況を点検・評価する事務調査を定期的に行うべきだと考えるものであります。具体的な手法については、今後の協議に委ねたいと思いますが、ぜひ、この点についても皆様のご賛同をお願いして、我々の修正案に対する賛成討論を終わります。