2013年6月「市立小学校における給食の放射性物質濃度検査を実施を求める陳情」に対する賛成討論

 次に、陳情第10号「市立小学校における給食の放射性物質濃度検査の実施を求める陳情」について、教育市民常任委員会では残念ながら不採択となりましたが、議員の皆様におかれましては、改めて賢明なご判断をいただけるよう、賛成の立場から討論を行いたいと思います。

 ご承知のとおり座間市では、市立小学校、市立保育園の給食食材の放射性物質濃度測定は行っておりません。これは、県央8市では座間市だけが実施しておらず、県下19市でも、実施していないのは座間市茅ケ崎市南足柄市だけと、極めて特異な対応となっておりますが、本市がこれまで実施してこなかった理由を検証しながら討論を進めて参りたいと思います。

 まず、「市場に流通している食品は安全だから検査は必要ない」という論点についてです。小学校給食の放射性物質濃度測定について、教育長はこれまでの議会質問などへの答弁で、次のような見解を示されております。

 「食品については食品衛生法及び食品衛生法施行規則並びに食品添加物等の規格基準において国が定めた新基準値の中で流通しているものと考えております。また、出荷元自治体の検査についても、(中略)都道府県内で生産された農畜産物について国が示された基準に基づいて責任を持って検査が行われているものと思っております。市場に流通する食品は、安全でなければなりません。検査機関で流通してはいけない食品が見つかれば公表後直ちに出荷制限出荷停止等の措置がとられているものと認識をしております。したがって、安全なものという認識を持っております。国へはルールの厳格な適用を求めるものでございます。」

 これは、2012年8月議会における教育長答弁ですが、「新基準値のもとで流通しているものと考える」「検査が行われているものと思う」「出荷制限・出荷停止等の措置がとられているものと認識している」という、以上三つのフレーズは、本市の放射線対策を考える上で、極めて象徴的なものであります。つまり、「検査がおこなわれているはずだ」「基準値以下で流通しているはずだ」「基準値超えの食品は出荷制限や出荷停止などの措置がとられているはずだ」という具合に、仮定の話、願望の話を基に、「安全なものと認識している」という「結論」を導きだしているわけですから、きわめて乱暴な立論であります。

 これに対し、陳情者は「国の要請に基づく産地検査が各県で行われていますが、流通される食品の全てを国の基準値内に収めるにはサンプリングの対象が不十分であることは明白であり、基準値超過の食品が市場に流通していた事実も多数判明しております」として、そのことを根拠づける資料として、厚生労働省が公表している2011年3月〜2013年3月までの基準値超過の流通品の検査結果リストを添付されております。

 それによると、この間の基準値超え食品は、合計138件。これは、教育長が言うところの産地検査を潜り抜けて市場に流通していた食品のうち、検査によって発見されたもののリストでありますから、実際にはこれ以上の基準値超え食品が流通していたことは、明らかだと言えます。よって、「市場に流通しているものは、産地検査により、基準値以下のものであるから、安全である」という論点は、事実をもって否定されるものであります。
 
 次に、教育長や教育委員会事務局がこれまで示してきたもうひとつの論点は、「食品の放射能検査は、国が責任を持って行うべきものであり、座間市が独自に行う必要がない」というものです。 これは、国のサンプリング検査が不十分と言うならば、国が責任を持つべきであって、座間市が独自にやるような筋合いはないというものですが、では、座間市は国に対してサンプリング検査の強化を積極的に求めているかと言えば、そうではありません。教育市民常任委員会で私は「これまで座間市が学校給食の放射能検査について、どのような要請を行ったのか」と質したところ、教育委員会事務局は「神奈川県市長会が提出した『国政に関する要望』」に『小中学校における放射線対策について』という項目がある」と答弁されました。確かに「食品の市場流通段階におけるモニタリング検査の充実・強化」が謳われておりますが、この項目を提案したのは伊勢原市であって、座間市ではありません。また、座間市が毎年国・県に提出している要望書にも、給食の放射能検査については触れられておりません。
 さらに、神奈川県の事業として、国の補助金交付金を活用した給食食材の放射能検査事業がありますが、それを活用しているかと言えば、座間市はそれもやっていません。

 「国に責任がある」と言いながら、国に対してモニタリングの強化を積極的に求めることもせず、不十分とはいえ国が補助金等を支出して実施されている県事業にも手をあげないというのは、どうにも理解しがたい対応としか言いようがありません。

 さらに、三つ目の論点として「小学校給食は、児童の食事のうち、年間換算すれば1/6にすぎない。1/6の食材を検査したとしても、意味がない」ということを、教育長や教育委員会事務局はおっしゃっておられます。

 この点については、端的に申し上げれば、放射線防護に関する基本的な認識の誤りを指摘させざるを得ません。何度も指摘しているように、放射線防護の国際的な基本原則は、ICRP(国際放射線防護委員会)も提唱するしきい値なしの直線モデル、すなわち「安全値は存在せず、放射線量の高さに直線的に比例し、がんの発生リスクが高まる」という点から、可能なかぎり累積放射線量を軽減することが必要とされます。特に、放射線に対する感受性の高い子供たちの放射線被ばくを可能な最小限にとどめることが求められているわけであり、それが1/6だから意味がないとするのは、これもまた、理解に苦しむものであります。

 以上、これまで教育長や教育委員会事務局が、給食食材の放射性物質濃度検査を行わないとする論点について、いかに合理性に乏しいのか、説明をして参りましたが、議員の皆様におかれましては、改めて陳情の趣旨をご理解いただき、ご賛同いただけるよう、お願いを申し上げて、討論を終わります。