座間市立市民文化会館の適正ではない使用に関する調査特別委員会 調査報告書

令和5年9月22日

 

座間市立市民文化会館の適正ではない使用に関する

調査特別委員会調査報告書

 

1.開催日時

第1回 令和4年10月27日(木) 午前10時35分から 午前11時25分まで

第2回 令和4年11月16日(水) 午後1時から 午後3時52分まで

第3回 令和4年12月16日(金) 午前9時から 午後4時26分まで

第4回 令和4年12月21日(水) 午後1時から 午後1時2分まで

第5回 令和5年1月16日(月) 午前9時から 午前10時9分まで

第6回 令和5年2月20日(月) 午前9時1分から 午前9時5分まで

第7回 令和5年3月15日(水) 午後1時から 午後1時5分まで

第8回 令和5年4月19日(水) 午後1時1分から 午後3時47分まで

第9回 令和5年6月13日(火) 午後1時から 午後1時15分まで

第10回 令和5年7月21日(金) 午前9時から 午前10時12分まで

第11回 令和5年8月29日(火) 午後1時から 午後1時1分まで

第12回 令和5年9月22日(金) 午前11時10分から午前11時12分まで

 

2.出席委員

委員長 沖永明久

副委員長 髙波貴志

委員 星野久美子

委員 加藤学

委員 内藤幸男(第3回欠席)

委員 沖本浩二(第1回から第4回まで) 美濃口集(第5回から)

 

3.出席参考人

第2回 令和4年11月16日(水) 

座間市長 佐藤弥斗

教育部長 安藤誠

第3回 令和4年12月16日(金)

教育長 木島弘

環境経済部長 山本浩由

資源対策課長 依田玄基

公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団理事長 池田徳晴

公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団専務理事 小林優

座間市立市民文化会館館長 星野渉

第5回 令和5年1月16日(月)

座間市議会議員 安海のぞみ

第8回 令和5年4月19日(水)

座間市長 遠藤三紀夫

教育長 木島弘

公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団理事長 池田徳晴

 

4.提出された資料

  • 池田徳晴公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団理事長より佐藤弥斗座間市長へ提出された顛末書
  • 座間市立市民文化会館指定管理者基本協定書
  • 座間市立市民文化会館指定管理者業務仕様書
  • 座間市立市民文化会館の管理運営に関する年度協定書(平成31年度、令和2年度、令和3年度、令和4年度)
  • 指定管理者指定申請書
  • 座間市立市民文化会館事業計画書
  • 座間市立市民文化会館収支計画書
  • 市の発行する納税証明書の写し
  • 社会福祉及び環境保護への取組状況
  • 公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団定款
  • 公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団登記簿謄本の写し
  • 公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団事業計画書及び収支予算書(平成30年度)
  • 公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団事業報告及び収支決算書(平成29年度)
  • 公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団労働災害補償保険加入証の写し
  • 公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団事業概要(平成29年度)
  • 公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団理事会議事録(令和3年度、令和4年度)
  • 公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団評議会議事録(令和3年度、令和4年度)
  • 公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団職務権限規程
  • 令和2年12月11日の座間市立市民文化会館小会議室の適正ではない利用について、虚偽記載された利用申込書、利用承認書及び領収書の控え
  • 池田徳晴公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団理事長より、公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団評議員及び監事へ発出された座間市立市民文化会館の不適切な利用に関する経緯等中間報告書
  • 池田徳晴公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団理事長より、木島弘教育長へ発出された座間市立市民文化会館の管理運営業務の実施状況調査について(回答)
  • 島弘教育長より、池田徳晴公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団理事長へ発出された座間市立市民文化会館の管理運営業務の改善について(勧告)
  • 池田徳晴公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団理事長より、木島弘教育長へ発出された座間市立市民文化会館の管理運営業務の改善について(一部報告)
  • 池田徳晴公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団理事長より、木島弘教育長へ発出された座間市立市民文化会館の管理運営業務の改善計画(提出)
  • 座間市立市民文化会館の適正ではない使用に係る佐藤弥斗座間市長と池田徳晴公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団理事長との面談回数、日時、面談内

 

5.本件調査に至る経緯

令和4年6月2日及び9月1日の一般質問において、安海のぞみ議員より、「元座間市の関係者が、本来であれば申請を必要とするハーモニーホールの施設を無断で使っているのではないかという情報提供を受けたが、そのような事実はあったのか。」との質問に対し、市長は「私もこの情報を少し以前になるが耳にし、確認をしたところ、そのような事実があったということが分かったので、厳重に注意をした。」との答弁があった。また、市長は公益財団法人座間市スポーツ・文化振興財団(以下、「財団」という。)から顛末書が提出され、「外部の方からハーモニーホールにおいて、市職員と話したい旨の連絡があったことを受け、本来は利用者が利用申込書を提出し、利用の承認を受けて利用していただくべきところ、その手続をせず、小ホール附属の楽屋を計3名で1時間程度利用をさせてしまった」との内容が記されていることを明らかにした。

 

こうしたことから、令和4年9月21日に開催された議会運営委員会協議会において、本件について、地方自治法第98条及び109条の規定に基づき、調査を行うことが必要であるとして、特別委員会の設置が合意され、同年9月28日本会議において、本特別委員会の設置が全員賛成で議決された。

 

6.本件調査の基本方針

本委員会では、令和4年10月27日に開催された第1回特別委員会において、本件調査の基本方針について、「1.適正ではない使用について、事実関係を明らかにすること」「2.適正ではない使用が行われた原因を究明すること」「3.再発防止策等について、調査・研究すること」の3点が決定され、この基本方針に基づいて調査を進めてきた。

 

7.本件調査の結果

1)事実関係の明確化について

 

調査を通じ、少なくとも2件の適正ではない使用が明らかとなった。

 

座間市立市民文化会館小ホール附属楽屋の適正ではない使用について

一件目は、令和3年5月11日の座間市立市民文化会館小ホール附属楽屋の適正ではない使用である。(以下、「事案1」という。)

 

ア、事案1の概要

本事案の概要は、「前市長である遠藤三紀夫氏から、令和3年5月11日(火)午前に、田原事務局長(理事)に電話があり、本日、市幹部と話がしたいので、場所を貸してほしいとの依頼があったため、事務局長が利用予定のない場所を確認したところ、小ホール附属施設の楽屋が空いていた。同日、昼過ぎに前市長ほか市職員2名が来館した際、利用申込みの手続きをせずに、1時間程度、小ホール附属施設の楽屋を利用させた」(令和5年3月29日財団提出の「改善計画」より)というものである。

   

イ、事案1に関する事実確認

 

事案1における面談の依頼について、当日遠藤前市長と面談した山本環境経済部長(当時)は、前日の5月10日に遠藤前市長より面談を求める電話があったとの答弁であった。遠藤前市長の答弁も同様であったことから、この面談は、遠藤前市長から山本環境経済部長(当時)に対し申し入れがあり、同部長の指示により依田資源対策課長(当時)が帯同したものと確認できる。

 

次に、面談場所が小ホール附属楽屋となったことについては、池田財団理事長は、田原事務局長(当時)からの聞き取り調査に基づき「遠藤前市長から施設を使用したい旨の依頼があった」とし、「小ホール附属楽屋の使用を許可したのは誰か」という質疑に対しては、「田原事務局長であります。」と答弁している。一方、遠藤前市長は、「当初は財団の応接室にて面談を行う考えでおりました。しかし、いわゆる3密という状況を避けるべきとの配慮から、空室であった小ホール楽屋で間隔をとって面談されたらいかがですかというお申し出をいただきました。このお申し出については、まさに時宜にかなった機転を利かせた緊急避難的配慮として受け止め、ありがたくそれに応じさせていただきました。」と答弁している。田原事務局長(当時)の参考人質疑が実現しなかったため、田原氏本人から確認することはできなかったが、遠藤前市長の答弁を踏まえるならば、田原事務局長(当時)が、面談場所として小ホール附属楽屋を案内したと推認できる。

 

次に、面談内容について、山本環境経済部長(当時)は、「前市長からは高座議会の内容についてはメディアの記事等々で概ね把握していると、それから内野市長から連絡があり、組合長として自らの進退にまで考えが及んでいるという話も聞いていると、その中で、構成3市の減量施策に係る連携についてはそれぞれの課題はあるが、海老名市長は組合長としての実績も豊富なので、その収め方についても考えているのではないか。あまり心配をするなという内容の助言をいただいたものでございます」と答弁し、依田資源対策課長(当時)は、「一連の問題の解決に当たり、誰を頼ったらいいというようなお話もあったかとは思いますが、所管事項でないため詳しくは覚えておりません」との答弁があった。また、遠藤前市長は、「3市の共同による大切な事業にきしみがあってはならないという強い思いから、内野組合長の思いや考えを伝えつつ助言をさせていただきたいと考え、担当される部長、課長に声をかけさせていただいた。」「座間市の減量化への取組と今後の姿勢について、誠意を込めてそれを示し事に当たって行けば必ずよい方向に向かうから、自信をもって進んでいただきたいと助言させていただいた」との答弁があった。

 

なお、山本環境経済部長(当時)と依田資源対策課長(当時)に対して、遠藤前市長との話は本市の高座清掃施設組合に関する対応に何か影響を与えたのかという質疑が行われたが、ともに「影響はありません」との答弁があった。この時期、海老名市、綾瀬市座間市で構成する高座清掃施設組合では、内野組合長(海老名市長)が辞職の意向を示されており、組合長人事に関する調整のアドバイスがあったのかとの質疑が行われたが、遠藤前市長は否定し、さらなるごみの減量化に向けたアドバイスであった旨答弁している。

 

ウ、事案1の不適正性について

 

座間市立市民文化会館条例第7条では「文化会館を利用しようとする者は、指定管理者の承認を受けなければならない」とあり、第8条では「前条第1項の承認を受けた者は、別表に定める使用料を前納しなければならない」と定められている。

 

事案1は、こうした条例の定めに反する行為ではないかという質疑に対して、佐藤市長は「条例第7条及び第8条の規定に照らしますと、適正ではないものと考えます」と答弁し、安藤教育部長は「条例第7条及び第8条の規定に照らすのであれば、適正ではないものと考えます」と答弁した。

 

一方、池田財団理事長は、「利用申込書を提出していただかなかったことから、条例第7条には違反する行為だったと思います。条例第8条につきましては、遠藤前市長とともに市の幹部職員2人が勤務時間中に利用されましたことから、市職員から利用申込書を提出いただければ使用料免除になると考えておりますので、条例第8条につきましては違反していないというように考えております」との答弁であった。

 

座間市立市民文化会館条例第8条第3項では「教育委員会は、特に必要があると認めるときは、教育委員会規則で定めるところにより使用料を減免することができる」とあり、座間市立市民文化会館条例施行規則第12条では「次の各号のいずれかに該当する場合に、当該各号に定める率により行う」として、第1号には「市が主催する行事等のために利用するとき 10割」と定められている。しかし、事案1における遠藤前市長と市幹部職員2名との面談は、「市の主催行事」には該当せず、安藤教育部長は「本件に関しては、規則第12条で定める減免の対象には当たらないものと考えます」と答弁している。

 

座間市立市民文化会館指定管理者業務仕様書では、「第5 留意事項」において、「1 公平な運営」として、「特定の団体等に有利、不利になるような運営は、これを慎むこと」、「2 法令等の遵守」として、「文化会館の管理運営業務を行うに当たっては、次に掲げる関係法令並びに条例及び条例に基づく規則を遵守し、誠実に指定管理業務を行うこと」が定められている。本事案は同仕様書の定めに違反するのではないかという質疑に対し、安藤教育部長は「本件は、利用申込みを行っていない者に施設を利用させていることから、公平な運営、法令等の遵守、いずれの面についても適正ではないものと考えます」と答弁し、池田財団理事長は「仕様書の定めに違反する行為であると考えております」と答弁した。

 

一方、参考人として本委員会に出席した遠藤前市長は、「本件使用が不適正であるという認識はあるか」との質疑に対して「私は不適正とは認識しておりません」として、「私は、座間市スポーツ・文化振興財団の前理事長として、ハーモニーホール座間の職員を激励訪問においてお邪魔しつつ、その最中に数十分、複数名の市職員に対してハーモニーホール応接室にて助言をさせていただくつもりでおりました。」「いわゆる3密という状況を避けるべきとの配慮から、空室であった小ホール楽屋で間隔をとって面談されたらいかがですかというお申し出をいただきました。このお申し出については、まさに時宜にかなった機転を利かせた緊急避難的な配慮として受け止め、ありがたくそれに応じさせていただきました。」と答弁している。

 

確かに、当時、コロナ禍の中、財団はハーモニーホール座間新型コロナウィルス対策ガイドラインを策定し、同ガイドラインに基づいて施設運営を行っていた。しかしながら、同ガイドラインには、感染状況の悪化や3密回避を理由に、条例で定める利用の承認の手続きを経ていないにもかかわらず、施設を利用させることができるような定めはない。財団は条例・規則に基づかない施設管理を行ったと言える。

 

座間市立市民文化会館小会議室の適正ではない使用について

 二件目は、令和2年12月11日の座間市立市民文化会館小会議室の適正ではない使用である。(以下、「事案2」という)

 

ア 事案2の概要

 

本事案の概要は、「前市長から令和2年12月10日(木)に田原事務局長(当時文化会館館長(理事))に電話があり、翌日取材を受けるので、会議室を取っておいてほしいと依頼があったことから、同日、事務局長は、座間市立市民文化会館利用申込書に自分の氏名、本財団の住所及び電話番号を記入し、小会議室の午後区分(13:00~17:00)の申込みをし、使用料2,140円を支払った。翌日の同年12月11日(金)、前市長は来館し、小会議室を利用し、事務局長に2,140円を支払った。」(令和5年3月29日財団提出の「改善計画」より)というものである。

 

イ 事案2に関する事実確認

 

事案2は、令和4年11月16日に開催された第2回特別委員会において、すでに明らかとなっていた事案1の他に適正ではない使用はあったのかという質疑に対して、佐藤市長から「令和2年12月10日に、遠藤氏が個人的な取材を受けるために会議室を使用した際、利用申込書を財団の職員が自分の名前と財団の住所を記入し、利用していたことを令和4年11月11日に財団から報告を受けました。」との答弁により、明らかとなった。

 

事案2について、令和2年12月10日に田原順子市民文化会館館長(当時)に、電話で利用申込みをしたのは間違いないかという質疑に対して、遠藤前市長は「間違いございません。」と答弁した。また、田原氏が利用申込書の虚偽記載を行ったことを承知していたのかという質疑に対しては、「この利用申込みについては、田原氏に任せきりにしてしまっておりました。後で振り返れば、電話でお願いする際に、当然私の個人情報でございます私の住所等をお知らせすればよかったわけですが、それを失念しておりまして、そのまま受け付けていただいたと勝手にこれを受け止めておりました。」と答弁した。

 

事案2は、田原順子市民文化会館館長(当時)が、事実とは異なる利用申込書を作成したことになるが、調査を通じて、この場合の利用承認の最終決裁権者は田原氏本人であること、また、決裁にあたっては田原氏の他に8名の決裁印が押印されていることが、明らかとなった。このことについて、財団内部でチェックはできなかったのかという質疑に対して、小林財団専務理事は、「今回の件については、利用承認の権限を持つ館長が起こしたことから、内部的なチェックができなかった面もあると考えております。内部チェックの有効な方法について検討してまいります」と答弁した。

 

ウ、事案2の不適正性について

 

座間市立市民文化会館条例第7条では「文化会館を利用しようとする者は、指定管理者の承認を受けなければならない」と定められている。遠藤前市長から前日に依頼され、事実とは異なる利用申込書を作成し、自ら決裁を行っていた田原順子市民文化会館館長(当時)の行為は、同条例第7条に違反する。

 

遠藤前市長は、電話で田原氏に依頼した際に、自らの住所等を知らせなかったので、田原氏が自らの名前と財団の住所を利用申込書に記載したとの答弁を行っているが、例え、遠藤前市長が自らの住所等を知らせていたとしても、適正な手続きとは言えない。座間市立市民文化会館条例施行規則では、利用者又は利用団体等の担当者が座間市立市民文化会館において、利用申込書の提出を行わなければならず、電話による予約や利用申込を行っていない。

 

本事案の不適正性について財団は、「本件は、電話連絡を受けた事務局長(当時文化会館館長(理事)が、利用者である前市長又は利用団体等の担当から前日までに直接利用申込書を提出等してもらわなければならないことに対し、電話連絡を受けた本人が、一般利用者との公平性の考えに至らず、事務手続きの代行を行ってしまったことにより発生した」としている。「一般利用者との公平性の考えに至らず、事務手続きの代行を行ってしまったことにより発生した」とあるように、前市長という特定の者に対して、条例・規則に反する措置を行ったことは、公共施設の管理・運営上、重大な誤りを犯したと言わざるを得ない。

 

③その他の適正ではない使用について

その他の遠藤前市長に係る座間市立市民文化会館の適正ではない使用については、今回の調査では確認することはできなかった。

 

 財団によると、「前市長が応接室等にいるところを見かけたことがあるか。見かけた場合、市職員は同席していたか」という点については、「前市長が応接室等にいた回数は、少なくとも5回から6回ありましたが、滞在時間、内容は不明でした」との報告が座間市教育委員会島弘教育長宛てに報告されている。

 

 また、佐藤市長、池田財団理事長及び遠藤前市長に対する参考人質疑においては、令和3年1月29日に本市職員が高座清掃施設組合の源泉徴収票ハーモニーホール座間応接室にいた遠藤前市長へ届けていたこと、令和3年7月5日に同じく応接室にて、池田財団理事長他2名の財団職員に次年度予算要求についてアドバイスを行っていたことが確認されている。

 

以上のことから、遠藤前市長が、市長退任後少なくとも5~6回ハーモニーホール座間応接室等に来訪していることは明らかとなったが、令和3年5月11日の小ホール附属の楽屋における市幹部職員との面談及び令和3年1月29日の源泉徴収票の手渡し以外に、本市職員との面談等は確認されなかった。

 

教育委員会及び市長の対応について

次に、遠藤前市長によるハーモニーホール座間の適正ではない使用に対する市長及び教育委員会の対応について、調査で明らかとなった教育委員会及び市長の本件対応に関する事実経過は以下のとおりである。

  • 令和3年11月頃、佐藤市長へ市民から「前市長が頻繁にハーモニーホール座間を訪れ、市職員を呼び出して指示をしており、市職員はそれに従っている」との通報があった。
  • 通報を受けて佐藤市長は施設を所管する教育部長に相談。教育部長は「噂の段階で調査はできない」と対応。
  • その後、佐藤市長と資源対策課長との話の中で、資源対策課長より「前市長からハーモニーホールの楽屋に呼び出された」との話があった。
  • これを受けて佐藤市長と教育部長が協議し、佐藤市長が直接通報を受けていることから、佐藤市長が財団に確かめることとなり、令和3年11月15日佐藤市長から池田財団理事長へ調査依頼が行われた。
  • 令和4年1月7日池田理事長から佐藤市長へ「そのような事実があった」と報告、佐藤市長は財団理事長へ厳重注意を行った。
  • 同年2月15日財団専務理事より、令和3年5月11日の件以外に、市職員がハーモニーホール座間応接室で遠藤前市長に会っていたことが報告され、調査の結果、令和3年1月29日に本市職員が高座清掃施設組合の源泉徴収票を届けていたことが明らかとなる。
  • これを受けて佐藤市長から教育部長へ「財団に顛末書の提出を求めたい」と連絡、教育部長は「すでに財団理事長から令和4年1月7日に報告と謝罪があり、市長が厳重注意した件について、あらためて書面提出を求める必要はないのでないか」との見解を示した。
  • その後、令和4年4月5日佐藤市長は、財団に対し、顛末書を提出するよう求め、同年4月19日、池田財団理事長より佐藤市長へ顛末書が提出された。
  • 令和4年10月3日、教育委員会は財団理事長及び専務理事から事情聴取し、本件に関する事実確認を行った。
  • 令和4年12月1日、木島教育長は、財団理事長に対し「座間市立市民文化会館の管理運営業務の実施状況の報告について」という題名の文書を発出。
  • 令和4年12月13日、池田財団理事長は、木島教育長あての回答文書を提出。
  • 令和5年2月28日 木島教育長は、財団理事長に対し「座間市立市民文化会館業務の改善について」という題名の勧告を発出。
  • 令和5年3月10日 池田財団理事長は、木島教育長あての「一部報告」文書を提出。
  • 令和5年3月29日 池田財団理事長は、木島教育長あての「座間市立市民文化会館の管理運営業務の改善計画について」と題する文書を提出。

 以上の事実経過を総括すると、ハーモニーホール座間小ホール楽屋の適正ではない使用が発覚してから本委員会の設置が議決されるまでの間、施設を所管する教育委員会の本件に対する対応は、あまりにも消極的であったと言わざるを得ない。本件調査にあたって、適正ではない使用を教育委員会が知って以降、どのような対応を行ってきたのかという質疑に対して、教育部長は、「令和4年1月7日の市長と理事長のやり取りをもって本件について教育部では解決済みと理解していました。そのため、その後、特段の対応はしておりません。」と答弁している。

 

ハーモニーホール座間は、財団が指定管理者として指定され、施設の管理、運営が行われてきた。指定管理者の指定を行ったのは座間市教育委員会島弘教育長であり、当該施設において適正ではない使用があった場合、これを指摘し改善させる責任を負うのは教育委員会であり、本件発覚後の対応は適切とは言い難い。なお、本委員会設置後の教育委員会の対応については、座間市立市民文化会館指定管理者基本協定書第18条に基づく業務状況の確認を行ったうえで、同基本協定第19条に基づく改善勧告及び改善計画書の提出を求めており、概ね適正な対応であったと認められる。

 

また、佐藤市長の本件対応については、教育委員会が当初、消極的な対応を示す中で、自ら財団理事長に調査依頼を行い、回答を得るなど積極的に対応したと認められるが、財団が提出された顛末書を当初、行政文書として取り扱わず、令和4年9月1日に本件に関する安海のぞみ議員の一般質問後の同年9月6日に、行政文書として収受している。これについて佐藤市長は「当初は、顛末書が提出され、私から口頭注意を致しましたので、公にせずに様子を見ておりました。しかし、安海議員の質問により、事態が明らかになりましたので、行政文書として正式な手続きを取るべきと判断し、行政文書としての手続きを取りました」と参考人質疑において答弁されているが、公正な公共施設の管理・運営を毀損した本件について、本来ならば安海議員の質問を待つまでもなく、公表し対処すべきであったと考える。また、そのことについては、教育委員会においても同様である。

 

2)適正ではない使用が行われた原因について

 

事実関係が確認された2件の適正ではない使用はなぜ生じたのかということについて、財団は、事案1については、「本件は、電話連絡を受けた事務局長(理事)が、前市長からの依頼による利用に市職員が帯同利用することにより、施設使用料が減免になるであろうとの思い込みの中で、利用者に利用申込書を提出してもらうこと、また「附属施設については、小ホールとの併用利用に限る」という規則に抵触してしまうこと、の2つの点を失念してしまった事務手続きの誤りにより発生した」とし、事案2については「電話連絡を受けた事務局長(当時文化会館館長(理事))が、一般利用者との公平性の考えに至らず、事務手続きの代行を行ってしまったことにより発生した」としている。

 

座間市立市民文化会館条例施行規則第6条(利用の申込み)では、「文化会館の利用の承認を受けようとする者は、別表1に定める期間内に座間市立市民文化会館利用申込書を指定管理者へ提出しなければならない」と定められており、別表1において小ホールは「14日前まで」となっていることから、事案1において、そもそも当日に事務手続きを行うことは不可能であり、「事務手続きの誤り」をその原因とするのは妥当ではない。財団側は、田原事務局長(理事)が緊急避難的措置として、小ホール楽屋の使用を勧めたことについては言及していないが、遠藤前市長の答弁どおりだとするならば、田原事務局長の行為は、事務手続きを失念した誤りではなく、本来、施設を利用させることができないにもかかわらず、使用を認めたのではないかと思われる。

 

財団は、事案2の原因の中で、「一般利用者との公平性の考えに至らず」と述べているが、この点が今回の2つの事案が発生した本質的な問題ではないか。すなわち、事案1、事案2、ともになぜ適正ではない使用が発生したのかと言えば、財団の一部職員(事務局長(理事))が、特定の人物たる前市長かつ前財団理事長である遠藤氏に対して、条例・規則に反して、便宜を図ったことによるものと思われる。

 

また、遠藤前市長については、現在一私人に過ぎないので、行政的責任を問われるところではないが、本市の前市長でありながら、結果として条例・規則に反する依頼を行い、財団の一部職員による便宜に対して、疑問を持ってもよかったのではないかと思うものである。

 

さらに、財団の一部職員による遠藤前市長への便宜供与に対して、財団の内部における統制機能が働かなかった点も、今回の問題の一因になっていると考える。

 

3)再発防止について

 

2件の適正ではない使用の原因が、財団の一部職員による遠藤前市長への便宜供与とそれに対する組織の内部統制機能が働かなかったことを鑑みれば、財団における理事職を含むコンプライアンスの徹底が求められる。

 

2件の適正ではない使用は、いずれも遠藤前市長からの依頼によるものであるが、本来ならば本市の条例・規則に基づき、財団職員はそのような依頼には応じられない旨を明確に伝えるべきものであった。ハーモニーホール座間は、本市の公共施設であり、本市市民の共有財産である。また、その利用は、本市市民はもちろんのこと、市民以外の方々にも開かれている。だからこそ、本市の条例・規則に基づいた公平・公正な運営が求められており、再発防止に努めるべきである。

 

今後は市長及び教育委員会は、ハーモニーホール座間の指定管理者である財団を適正に評価するために、本市の条例・規則に基づいた運営がなされているか、管理監督していくべきである。

 

以上。