議会は市民とどう向き合うのか

 昨今、地方議会についての議論が噴出している。「議会は一体何をやっているのかわからない」「市民の声が反映されていない」「議員の数や報酬が多すぎるのではないか」等々、おしなべて否定的な意見が数多く聞かれる。こうしたことは、現状の地方議会が本来果たすべき役割を十分に発揮していないという「評価」だと考える。今回のレポートでは、議会改革の方向性として、議会が本来果たすべき役割とは一体どういうことなのかということを考えてみたい。

地方自治における二元代表制とは何か」

 国と地方では、民主主義の制度が明らかに違っている。国の制度では、国民は選挙で国会議員を選ぶ。国会(立法府)は内閣総理大臣を指名し、総理大臣は内閣(行政府)をつくる。これは議員内閣制と呼ばれ、国民が直接選挙で総理大臣を選ぶことはできない。
 一方、地方の制度では、首長も議員もそれぞれ選挙で選ぶ。つまり二つの民意が存在し、首長には行政の執行権が、議会には決定権が与えられ、相互に牽制し合いながら、地方自治を進めていくことになり、二元代表制と呼ばれている。
 国会の場合は、内閣総理大臣を国会議員から選ぶので、どうしても「与党」「野党」という関係が生まれるが、地方議会の場合は別々に選挙に選ばれるわけだから、本来「与党」「野党」という関係はあり得ないはずである。ところが、往々にして「市長の与党だから反対できない」とか「野党だから反対だ」という声を聞くことがある。これは地方自治制度に対する理解不足と言える。
 二元代表制とは、決定(議会)と執行(市長)を分けることであり、本来、地方議会は、基本的には行政から独立した「意思決定機関」であり、あわせて議会が意思決定したことをちゃんと執行しているかどうかチェックする「監視機関」であり、さらに条例の制定などを行う「立法機関」であると言える。故に市民の皆さんには、こうした地方議会本来の役割をしっかりと果たしているのかどうかという点から議会、議員を評価・監視していただきたいと思う。

「市民・首長・議会の関係」

 もう一つ国の制度と地方の制度の違いは、直接民主主義制度の違いである。国では憲法上国権の最高機関である国会に主権の行使を委ねている。選挙以外に国民が直接参加できるのは、憲法改正国民投票最高裁判事の国民審査だけ。国民が国会議員を任期途中でやめさせることはできない。「こういう法律をつくって欲しい」と直接請求することはできない。「税金の使い方がおかしい」と会計検査請求をすることもできないし、行政訴訟(国民訴訟)もできない。
 一方、地方の場合は、市長や議員をやめさせたいと思えば市長リコールや議会の解散請求、「こういう条例を作って欲しい」と思えば条例の直接請求、「これは税金のムダ使いではないか」と思えば監査請求、住民訴訟が認められている。さらに昨今こうした地方自治法に基づく手続きに加えて、重要な問題について住民投票制度を設けている自治体も増えている。(残念ながら座間市には住民投票制度はない)
 つまり、国の制度は完全な間接民主主義になっているが、地方は間接民主主義と住民の直接請求など直接民主主義を並立させた制度となっており、いわば地方自治は、市民、首長、議会の三つの力で動かしていくというのが、本来の姿と言える。(私は国の制度としても直接民主主義を並立させるべきだと思っているが)

「問われる議会への市民参加と説明責任」

 昨今の地方議会への市民の批判・不満はどこからきているのだろうか。私は、本来議会が果たすべき役割が忘れ去られ、執行権者(首長)と決定権者(議会)が融合し(もっと強烈に言えば談合し)、市民が疎外されているところにあるのではないかと思っている。
 一方最近では首長(執行権者)側は、「市民の説明責任」や「政策決定過程への市民参加」の仕組みを整備してきている。一昔前には、こうした行政の市民参加施策は、「市民の代表である議会を軽視している」などという声が議会側からあったが、最近ではさすがにそういう方はおられず、いわば当たり前のこととなってきた。
 では、議会は市民との関係をどうするのかということ。私は、議会(決定権者)が決定をする際に、最大限市民の声を聞く、市民と議論をするという市民参加が議会にも必要だと思う。また議員同士の議論の活性化や情報提供を積極的に行い「決定」の過程をわかりやすくする必要がある。具体的には、次の点を提案するものである。皆さんのご意見をお聞かせいただきたい。

市政の重要な問題についての住民投票の実施
・すでに多くの自治体で制度ができている。首長も議会もその結果を尊重する義務を負う。

議会パブリックコメント(市民意見公募手続
・すでに座間市でも行政側は実施している。議会側も議決にあたって、市民の意見をもとに決定すべき。

公聴会参考人制度の活用
地方自治法では、公聴会は「常任委員会は、予算その他重要な議案、陳情等について公聴会を開き、真に利害関係を有する者又は学識経験を有する者等から意見を聴くことができる」。参考人は「常任委員会は、当該普通地方公共団体の事務に関する調査又は審査のため必要があると認めるときは、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる」とあるが、ほとんど活用されていないのが実情。

地域ごとの議会と市民との意見交換会、議会報告会の開催
・議員個人では行っている例もあるが、議会として広く市民の意見を聞き、決定したことについて責任を持って報告する(情報提供)制度。

請願・陳情者の意見表明の保障
・ある意味当たり前のはずですが、実施されている議会は少ないのが現状。座間市では現在、会議の開会中ではなく、「休憩中」に実施されている。

議員同士の議論の活性化
・これも当たり前のはずだが、座間市議会でも十分とは言えない。首長(執行側)への質疑・質問が中心となっているのが現状。

議会の政策形成能力の強化(議員提出議案など)
議会のチェック機能の強化(行政事務調査)
議会の情報公開・情報提供の強化
本会議での一問一答形式での議論
日曜議会、ナイター議会の開催