2012年3月 討論(一般会計予算に対する反対討論の一部)

 まず、2012年度の一般会計予算について。歳入の個人市民税では、子育て世帯の増税が行われます。これは、16歳未満の扶養親族に係る扶養控除(年少扶養控除)と16歳以上19歳未満の特定扶養親族に係る扶養控除の上乗せ分が廃止されることによるものであります。
 本来、この年少扶養控除等の廃止は、民主党政権子ども手当の創設にあたって、相対的に高所得者に有利な所得控除から、中・低所得者に有利な現金給付に切り替えるという政策ポリシーのもと、子ども手当月額26000円の給付を前提として制度設計されていたものであります。(残念ながら一度も達成されることはありませんでしたが)
 ところが、新年度から、給付額は3歳未満児と小学生までの第3子以降は、月額15000円となったものの、その他は全て月額10000円となり、さらに年少扶養控除等が廃止されますから、子育て世帯の家計上のプラス効果は少なく、さらにマイナス効果しかない世帯も生み出されることになったわけであります。
 しかしながら、民主党自民党公明党の3党協議では、「子ども手当」なのか「子どものための手当」なのか「児童育成手当」なのか、それとも「児童手当」なのかなどというくだらないメンツのための議論を繰り返されてきましたが、子育て世帯の家計にとってマイナス効果となることについては、なんら具体的な対応は示されておりません。
 一方、地方自治体の財政への影響を見て参りますと、2011年度までの地方自治体の負担割合は旧児童手当の時代と基本的には変わらず、本市の場合、昨年度は約2億8000万円。一方、新年度からは約3億3000万円の負担となります。これについて、市長は、「年少扶養控除等の廃止により約2億4000万円増収となるが、一方で子ども手当の市負担分は、その増収分を上回り3億3000万円となる」と答弁されておられますが、これは比較の基準が違うのではないかと思います。もちろん、国からの法定受託事務である同事業に地方自治体の負担が生じること自身が根本的に間違っているという考え方においては、市長とも共通するものでありましょうが、制度の変更に伴う負担と増収の関係を見る場合は、変更前と変更後を冷静に見るべきであります。子ども手当の負担増は、3億3000万円の純増ではなく、負担増を表すとすればこれまでの負担割合が変更されたことにより増えた約1億5000万円。一方年少扶養控除等の増収分約2億4000万円は純増となりますから、本市としてはトータル9000万円の増収と捉えるべきだと思います。
 そして、この9000万円の増収分は言うまでもなく子育て世帯からの増税分ですから、歳出においては、本来なら子育て支援策の新規事業などに充てるべきものです。しかしながら、新年度予算案の子育て支援関連の事業で実施計画を上回る予算措置は行われておりません。今後、制度の動向を注視しながらということにはなりましょうが、経常的に歳入されるものでありますので、制度変更の趣旨からし子育て支援策への重点配分を求めておくものであります。

 次に、同じく歳入について、特定防衛施設周辺整備調整交付金について、我々の基本的立場を明らかにするとともに、国に対し求めていくべき点を申し上げたいと思います。
 特定防衛施設周辺整備調整交付金は、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律第9条に基づいて、本市では2011年度より交付され、新年度では約5800万円が計上されております。この交付金は、法律上の規定では「防衛施設の設置又は運用がその周辺地域における生活環境又はその周辺地域の開発に及ぼす影響の程度及び範囲その他の事業を考慮し、当該周辺地域を管轄する市町村がその区域内において行う公共用の施設の整備又はその他の生活環境の改善若しくは開発の円滑な実施に寄与する事業で、政令に定めるものを行うための費用に充てる」こととなっております。
 まさに芸術的と言ってよいほどわかりずらく、その意味を理解させないための文言ではないかと思われるものですが、具体的に見ていきますと、その非合理性が明らかになります。
 まず、基地があることによる生活環境や周辺地域の開発に及ぼす影響に対する「補償的」な性格の交付金であると防衛省は説明をしていますが、基地の運用による「影響」が、なぜ地方自治体の公共施設建設や事業への補助金となるのか、その因果関係は全く明らかではありません。すなわち、本市の場合、キャンプ座間におけるヘリコプターの使用が対象となっているわけですが、その生活環境の影響を受けるのは、騒音などの被害を受ける住民であり、被害と補償との関係を明確化するならば、防音工事などで直接住民へ給付されるべきものであります。
 また、「周辺地域の開発に及ぼす影響」の補償的措置だとすれば、これは基地の存在による固定資産税の税収減という形で、当該の地方公共団体との因果関係はありますが、それならば、本来固定資産税の代替措置と明確に規定されながら、現状の固定資産税評価額から導き出される額を大幅に下回っている、いわゆる基地交付金に統合されるべきものであります。
 結局、基地が存在しその運用によって影響を受ける被害と交付金との間には、なんの因果関係もなく、有体に言えば、あるいは端的に言えば、基地があることに対する訳のわからない「迷惑料」でしかないということであります。
 これは、米軍再編交付金も同様でありますが、基地被害の補償を明確な因果関係もなく、地方自治体へ交付されることは、電源三法に基づく原発立地自治体への補助金交付金の支出と同様の構造であると言えます。
 そこで、整理をしておくならば、本市が長年にわたって求めてきた基地負担の軽減とは、それは、基地の整理・縮小・全面返還が具体的に進むこと。その上で、現実に基地が存在している間の基地被害の補償は、防音工事など直接被害を受ける住民に給付され、その被害の緩和に寄与するものであること。そして地方自治体への財政的補償は、訳のわからない「迷惑料」として受け取るのではなく、基地が所在することによる都市計画への阻害要因からして、固定資産税の代替措置である基地交付金の実際の評価額に基づく交付額であること。以上のような点につけると思います。
 よって、我々は以前からも指摘しておりますが、防衛省のひも付き交付金、あるいは意図付き交付金と言った方が適切かもしれませんが、そうしたものではなく、市街化区域の固定資産税評価額からすれば約10億円でありながら、毎年2億円ほどしか交付されていない基地交付金、しかもこれはひも付きではなく、一般財源として自由に使えるものですから、本市の裁量で事業への充当を決めることができます。この基地交付金の増額を国へ強く求めていくべきであることを、再度市長に申し上げておくものであります。
 次に、歳出予算について、主だった点について、何点か指摘しておきたいと思います。まず、総務費関係の事業。
 さきほど指摘をしました特定防衛施設周辺整備交付金は、歳出においては基金に積立られ、市長は提案説明において次のように述べられました。「現在、建設計画を検討している新消防庁舎の中に市民の防災活動の拠点となる施設整備の費用に充てるため、特定防衛施設整備調整交付金を活用し、計画的に基金に積立をする」。
 我々は、この「市民の防災活動の拠点となる施設」とは一体どういう施設なのか、この施設建設は防災施策の中でほんとうに優先順位が高いものなのか、等々の観点から、今定例会で審議して参りました。しかし、審議の中で明らかになったことは、この施設は、単に新しく建設される消防庁舎の中に元々予定されていた「研修室」にすぎないことであります。消防長の説明では「救急救命の講習や危険物取り扱いの講習、施設見学の際に説明を行う場所」とのことでありますから、どう考えても「防災活動の拠点となる施設」という説明はそぐわないものであります。
 要は、新消防庁舎の建設にあたって、財政的負担を軽減するために、国からの補助金を活用しようと思えば、特定防衛施設周辺整備調整交付金は、消防庁舎のような「公用施設」には適用されず、「公共施設」には適用されるので、この「研修室」の分だけでも、同交付金を活用し、建設費を節約しようというものでしょう。
 では、なぜこうした裏技のような交付金活用となったのか、という点であります。ご承知のとおり、新消防庁舎の建設予定地は、今年に入って急遽、現消防庁舎用地からキャンプ座間の部分的返還地へ変更となりました。その最大の理由は、現消防庁舎の南側の法面が、昨年秋土砂災害防止法に基づく県の調査が入り、その結果次第では、土砂災害特別警戒区域あるいは土砂災害警戒区域に指定される可能性もあり、そうなると建築物の構造規制などがかけられることとなり、消防庁舎建設に影響が出るとされています。
 それで、急遽、基地返還促進委員会への諮問・答申も省略し、現消防庁舎の当面となるキャンプ座間部分的返還地の公園予定地面積を削って、建設しようとすることとなったわけです。ところが、公園予定地は実勢価格の1/3で国から買い取ることができますが、消防庁舎用地は実勢価格で買い取らねばならず、当初の跡地利用計画に比べると経費負担は確実に膨れることになります。そこで、新消防庁舎建設費を少しでも安くするため、研修室の分だけでも防衛省交付金でまかないたいということが、今回の「防災活動の拠点となる施設の整備」なる訳のわからない予算措置に至った真相ではないでしょうか。
 ここで、問題となるのは土砂災害防止法に基づく調査と警戒区域等の指定の可能性は、予測できない事態だったのかという点です。消防長は、本会議において「認識していなかった」と答弁しておりますし、我々の聞き取り調査では、防災施策を所管する安全防災課も「知らなかった」としています。一方、急傾斜地の安全対策を所管する都市部建築・住宅課は、「承知しており、消防庁舎建設検討委員会の専門部会で、そのことを指摘していた」と述べております。
 一体どのような庁内調整が行われていたのでしょうか。その上で、どのような議論を経て、現消防庁舎への立替という方針が決定されていたのでしょうか。いずれにせよ、本来予測可能であった事態に組織として対応する能力があれば、計画を二転三転させたり、結果として経費増を招くようなことはなかったはずです。「防災拠点」などいう意味不明の予算説明ではなく、「行政事務の失敗で、経費増となるので、研修室の分ぐらい安上がりにしたい」という本当の理由を、真摯な反省とともに行うべきだったのではないかと思いますし、猛省を促すものであります。
 さらに、その上で、今回の特定防衛施設周辺整備調整交付金基金への積み立ては、一体いつまでに、どのくらいの額を積み立てるのか明らかになっていません。取り崩しの時期も不明です。また、なぜこの時期でなければならないのかも不明です。市長の提案説明では、「計画的に基金に積立をする」と述べられておりましたが、その計画は、現時点では全くの明らかではありません。よって、今回の特定防衛施設整備調整交付金基金への積立には同意することはできないことを申し上げていく次第です。

 次に、本来なら総務費関係の事業として予算計上されるべきものでありながら全く計上されていない事業として、放射能対策経費があります。このことについては、強く異議を申し上げたいと思います。
 今定例会の中で、市長は本市の放射能対策について、次のような趣旨の答弁をされました。
放射能対策は国が責任を持って行うべきだ」「過剰に心配する人たちがいる一方で、放射能対策にお金を使うのはムダづかいだという声もある」「放射能の影響は、いろんな見方がある」「本市の測定結果では、健康に影響はない」ということであります。
 まず、「放射能対策は国が責任を持つべきだ」という点については、基本的に同意します。しかし、中央政府が責任を持った対策を講じていない状況で、住民の生命と生活を守る立場にある地方自治体がどのように対処するのかが問われていることぐらいは、ご理解いただけると思います。
 「放射能の影響は、いろんな見方がある」という点についても、現状を素直にみれば、その通りでしょう。低レベル放射線被曝がもたらす長期的影響は、明確にはなっていません。しかし、だからと言ってこのことを持って「健康への影響はない」と結論付けることはできません。 わが国における放射線被曝の主なデータ蓄積は、広島・長崎の原爆被害調査ですが、これとても放射線の影響が軽く見積もられていた時代に始まっているばかりか、加害者たるアメリカの主導で行われており、信頼性が不十分です。特に、当時のアメリカの関心事は、核攻撃後における兵員の戦闘能力が、放射線被曝によってどのくらい影響を受けるのかという点でしたから、調査は外部被曝に限定され、内部被曝についてはほとんど考慮に入れられておりませんでした。それ故現状では、国際的にもICRP(国際放射線防護委員会)のしきい値なしの直線モデル、すなわち安全値は存在せず、放射線量の高さに直線的に比例してがんの発生リスクが高まるという、一般仮説が放射線防護の基本原則とされています。
 我々は、低線量被曝の長期的影響について科学的知見が確立していない段階で、行政のリスク管理はどうするのか、というリスク管理の問題として、低線量被曝に対する対応を定めていくべきと考える次第です。リスク管理ですから、確かにムダになる可能性もあるでしょう。しかし、その影響が未確定であるが故のリスク管理ですから、ムダになる可能性は当然織り込んだ上で、リスクの最小化のために対応をとるべきだと思います。
 空間放射線量測定について市長は、私の一般質問に対して「やめたわけではない、必要に応じて実施することを検討する」と述べられておりますので、定期的な実施を求めておくものであります。
 一方で、本市の除染基準については、ただちに是正するよう求めるものであります。本市では、昨年11月に実施された142地点の空間放射線量調査の際には、毎時0.23マイクロシーベルト以上の数値が測定された場所については除染を行うことが定められておりましたが、今定例会の中で環境経済部長は、文部科学省が昨年10月21日に示した「当面の福島県以外の地域における周辺より放射線量の高い箇所への対応方針」において、「周辺より毎時1マイクロシーベルト以上高い数値が測定された箇所について報告が求められているので、これを本市の除染基準とした」と除染基準を一気に4倍以上も引き上げております。
 改めて、申し上げますがこの文科省の対応方針は、地方自治体の除染基準を定めたものではありません。あくまでも文科省への報告を求める目安であり、かつ除染活動に対する支援を要請することができる目安でしかありません。文科省の担当者も「地域住民のニーズに応じて、自治体が独自に基準や対応方法を決めることはなんら問題はない」と答えております。
 周辺自治体を見ても、大和市厚木市が高さ5cmで毎時0.19マイクロシーベルト以上、海老名市、綾瀬市相模原市が同じく高さ5cmで毎時0.23マイクロシーベルト以上を除染基準としておりますから、本市の「高さ1mで周辺より毎時1マイクロシーベルト以上高い数値が測定された場所」というのが、際立って高い基準になっていることがわかります。ただちに除染基準値を、最低でも昨年度と同様に毎時0.23マイクロシーベルト以上の地点と改めるよう、強く求めておくものであります。
 さらに、教育委員会所管事項となりますが、学校給食の食材の放射性物質濃度測定についても、ここで合わせて指摘しておきます。
 この学校給食の食材検査も、周辺自治体が、方法は違えども何らかの方法で実施しているにもかかわらず、未だに実施されていないという点では、本市は際立った対応となっています。
 教育長は今定例会でも「学校給食の放射性物質濃度測定につきましては、食材の出荷元自治体におきまして検査を行っており、暫定規制値を上回る食材は市場に流通していない仕組みであり、安全であると考えております」という国の想定問答集をそのまま引き写しにしたような答弁を今回も繰り返しておりますが、「出荷元自治体の検査」はサンプル検査であり、全ての食材が検査されているわけではありません。現に座間市でも昨年、小学校給食に暫定規制値を超える牛肉が使用されていた可能性が高いことが明らかになっています。「出荷元自治体の検査」が十分ではないことには言及せずに、あるいは「流通しない仕組み」がほんとうに機能しているのかということも言及せずに、「安全であると考えております」と結論付けるわけですから、はなはだ教育者らしからぬ極めて乱暴なロジックとしか言いようがありません。子どもたちの内部被曝のリスクは、ある意味で外部被曝のリスクと比べても深刻です。学校給食並びに保育園の食材検査を直ちに実施するよう、再度強く求めるものであります。
 さらに、本市の水道事業における放射性物質濃度測定についても、指摘しておきたいたと思います。本市において唯一放射性物質濃度測定を行っているのが水道事業ですが、現在の検査方法では測定時の検出限界は、10ベクレル。つまり、例えば放射性物質濃度が9ベクレルだった場合も、「不検出」という測定結果になるわけであります。本年4月からの新基準値では、飲料水の規制値は10ベクレル以下になるわけですから、基準値と検出限界値が同一だというのは明らかに妥当性に欠けます。ちなみに海老名市の牛乳の検査の検出限界は、0.52ベクレル〜0.77ベクレルですから、本市の水道水の検出限界10ベクレルがいかに高い値であるかということが、わかると思います。早急な改善を求めるものです。